高家 個人的には、集権型でも分権型でも正解は1つではないし、日本は独自の経営スタイルを築くべきと思っているんです。ただ、どれにしても、明確な経営ディシプリンに基づいて経営しなければなりません。海外に進出する日本企業の多くは、買収した海外企業を本社集権的にグリップするわけでもなく、かといって現地の優秀な人材に任せているわけでもない。どっちつかずの中途半端な状態になっています。
野田 日本の経営者の方はよく「現地の経営陣を信頼して、任せている」と言います。一見するとヨーロッパ型の分権経営のようですが、内実は放置しているだけというケースが多いのではないでしょうか。
信頼して任せるには、その会社の企業文化や価値観の共有が前提になります。それがあってこそ、何も言わなくても阿吽の呼吸で動ける。しかし、異なる企業同士の合併や事業統合、しかも相手が海外の企業となれば、信頼して任せるための土台がそもそも共有できていないわけです。
高家 異なる仕組みで経営されてきた会社が自社の傘下に入ってきた場合、少々乱暴な言い方になりますが、「うちの会社はこうなんだ」と相手に叩き込む必要がありますよね。
野田 ええ。私は常々、海外企業を買収した日本企業は、もっと自社の色を押し出すべきだと思っているんです。自社が培ってきた経営スタイルや戦略を明確に打ち出して、自信を持って相手企業にも取り入れさせる。言うなれば、相手を自社色に染めていくということです。
それを徹底せず、中途半端に任せたり任せなかったりしているので、目に見えないリスクがどんどん大きくなって、顕在化したときには業績が極端に悪くなっていたり、事業の方向性が本社の期待とはまったく違うものになってしまったりするのです。
高家 グローバル展開を成功させるには、現地に乗り込んでいって、自社流の経営ディシプリンを叩き込み、買収した企業を変革していくような実行の担い手が不可欠ですね。
野田 そう考えると、経営の仕組みづくりも結局は人材の問題になりますね。
高家 同感です。グローバルに会社経営や事業運営ができるプロフェッショナルなリーダーが圧倒的に不足していることが、今の日本企業の最大の問題だと思います。