野田 『プロフェッショナル・リーダー』の中でも、KPI(キー・パフォーマンス・インディケーター=重要な経営管理指標)を決めて壁に張り出したり、定期的にニュースレターのようなかたちで社内に発信したりして、自分たちが上手く行っていることをきちんと示すシーンを描きました。そうした目に見える成果を示すことで、改革に対するモメンタム(勢い)を作り出し、組織を一つにまとめていくことができますよね。
高家 やや横道ですが、「今取り組んでいることに結果が出ている」と社内の他部門や上司にもアピールすれば、改革への余計な横やりを防ぐこともできます。「はしごを外されない」ためにも、これ結構重要なんです。実行は、ただひたすら早く前へ突き進んでいけばいいのではなく、上手くステークホルダーを巻き込むこともプロフェッショナルスキルだと思います。
野田 お話を聞いていると、難局のときのリーダーシップって、特定のスキルが突出している必要はなく、むしろすべてのスキルで平均点以上であることが大事なのかなと思います。業績改善のための手法も、組織を管理する能力も、組織のメンバーを説得するコミュニケーションスキルも、すべてが等しく求められる。逆に組織管理能力は抜群でも、コミュニケーションスキルがゼロでは、リーダーとしての役割は果たせないということですかね。
高家 たしかに、改革は狭い道を全速で駆け抜けるようなもので、かつ1回目の改革に失敗すると2回目はかなり難易度があがります。従って、何かひとつでもスキルが欠落していると、難局を乗り切る上での失敗リスクが高まります。あらゆる能力を駆使して、一つ一つの成功をきっちり積み上げていってこそ、です。その意味では、プロフェッショナルなリーダーや経営者は、野田さんがおっしゃるようにすべてのスキルを身につけておく必要はあります。ただ、平均点以上というレベルよりも、すべてをかなり高いレベルで備えている必要がありますよね。
(高家氏×野田氏対談の後編は、7月2日木曜日に配信予定です)