これまでの連載から実は私も思い込みに支配されているかも……と思った方も少なくないのでは?『人生の99%は思い込み』の著者である心理学者の鈴木敏昭がさらに思い込みの正体に迫る。思い込みは4つの「認知バイアス」からなり、また「強い信念」の正体も実のところは思い込みだという――。
思い込みを生み出す
「認知バイアス」に気をつけろ
日曜の夜になると、「明日から会社か……」と憂鬱になるビジネスマンは多いだろう。憂鬱になる出発点は、「仕事はつらいもの」という思い込みがあるからだろう。仕事が楽しいと思い込んでいるなら、期待や興奮といった心の働きにつながり、日曜の夜も気持ちよく過ごせるはずだ。
このように、同じ事柄であっても、その人の思い込みによって楽しくなることもあれば、つらくなることもある。
これを「認知バイアス」という。まずは、どういった認知バイアスがあるのかを把握しておくことが大切だ。
ここでは主に4つのバイアス「決めつけの思考」「欲望」「感情」「自己意識」をご紹介しよう。
バイアス1.決めつけ思考
心理学用語で「スキーマ」という言葉がある。これは心の枠組みを意味する。
世の中には偏見が満ち溢れている。たとえば、髪を金色に染め、派手なメイクをし、原色の派手な服を着ている女性が子どもを連れて歩いていると、「ヤンママだ」「ちゃんと子育てをしていなさそう」「家事もちゃんとやっていないんだろうな」と思う人は少なくないだろう。
このような偏見は、スキーマの一種である。「派手な人はいいかげん」と決めつけてしまっているのだ。
実際は真面目な母親かもしれない。しかし、勝手に「近寄らないほうがいい」と判断し、態度にも露骨に出してしまったりする。
このようなレッテル張りは、無意識のうちにやってしまっていることが多い。レッテルを張ったほうが楽だからだ。
人は、とかくそうやって同じ傾向の人たちを分類したがる。そうやって分類して考えたほうが理解しやすいのだ。
バイアス2.欲望
男性が、街で肌を露出して歩く女性に思わず見とれてしまうのは、それが本能だからだろう。異性に対する欲望という思い込みが「見とれる」という行動を生む。欲望というのは、根源的なある種のバイアスである。
「本能の赴くままに」という表現がある。
そう聞くと、考える前に行動しているようなイメージを受けるが、実際にはこうしたバイアスが作用している。
甘いものばかりを衝動的に食べてしまうのは、「甘いものを食べたい」という欲望があるからであり、その根底には「甘いものを食べられたら幸せな気分になれる」といった認知バイアスがあるからだろう。