バイアス3.感情
嬉しい、楽しい、苦しい、怖いといった感情もバイアスを生む。
 「感情」によって、認知の仕方は変わる
のだ。
 しょっちゅうダジャレをいう上司がいるとする。自分の気分がいいときは、「場を盛り上げてくれようとしているんだな」と好意的にとらえて笑えるのだが、疲れているときは「空気を読めない上司だな」とイラッとする。
 もしくは、他人の成功を見て、自分の調子がいいときには「おめでとう!」と素直に喜べるが、不調のときは「ちっ!」と舌打ちをして嫉妬してしまう。そんな体験をしたことはないだろうか。
 これを「気分一致効果」という。気分がいいときはいい情報を、気分が悪いときは悪い情報ばかりを集めてしまい、物事のとらえ方が気分によって変化する現象のことを意味する。
 恋人や友人にメールを送って、その日のうちにメールが返ってこないと不安になった経験があるのではないだろうか? そんな気分のときに返信されたメールがそっけないと、「何か怒らせるようなことをしたかな」「自分は嫌われているんだろか」と、どんどん不安になっていく。これも認知バイアスである。
 自分が仕事や趣味に没頭していたら、返信がなくても気にならないかもしれない。不安という感情は、同じシチュエーションであっても、必ず生まれるとも限らないのだ。自分でどんどん不安な材料を探して、不安になっているといえる。

バイアス4.自己意識
 女性がよく「私って◯◯じゃないですか」などと自己評価しているのを耳にする。
 多かれ少なかれ、人は自分の性格を分析している。履歴書の長所と短所の欄に書く「自分は誠実だ」「自分は負けず嫌い」といった特徴もまた、バイアスにすぎない。そして、その意識は、そう明記することで強力になっていく。まさに「嘘から出た真」のような状態だ。
 心理学では、自己評価など自分自身に意識を向けて認識することを「自己意識」と呼んでいる。自己意識が高い・低い、強い・弱いという表現で使われることが多い。
 自己意識が高い人は、常に自分のしたことを反省していたり、自分を理解しようとしている。さらに、周りの人にどう思われているのかも気になる。周りの評価が気になるということだ。
 髪型やファッションに気を遣うのも、周りの人にどう思われるのかという「他者評価」を意識しているからである。異性にモテそうな服や髪型にこだわるのは、分かりやすい例だろう。

こうした認知バイアスが思い込みを生み出し、増強させていくのである。
 もちろん、偏りをまったくなくして世界を見ることは不可能だろう。しかし、こうしたバイアスがかかっていることに意識的になるだけでも冷静になれたりするものである。