「巨人の星」も実は思い込み!?
「強い信念」の正体とは
アニメ「巨人の星」は思い込みに彩られた世界である。
「思い込んだら試練の道を」という主題歌の冒頭からしてそうだが、大リーグ養成ギブスをつけて特訓を積むのも、自分が巨人のエースになるのだと父親により思い込まされていたからだ。父・星一徹の息子に賭ける激しい期待も思い込みである。思い込み一筋で、巨人のエースを勝ち取った親子なのだ。
このように思い込みは、成功すれば「信念」とも言い換えられる。信念を貫き通す人は、強く気高い人物のように感じるだろう。
子どもの頃の親の教育がしっかりしていた、あるいは過酷な体験をして精神的に強くなっていったと思うかもしれないが、環境要因ではなく、思い込みが作用しているだけかもしれないのだ。
そもそも、人のパーソナリティは、その人が心の底から信じている「信念」というものを基盤として成り立っている。自分が「正しいと思い込んでいるもの」が信念になるといえるだろう。
私たちが「信念」だと思い込んでいるのは、以下のような考えから生まれる。
(1)「価値があると思っていること」と「現実」が一致すべきだ
ガンジーやマザー・テレサは信念の人だろう。彼らはインドの独立運動や貧しい人を救うことは価値があると考え、それを実現すべく行動を起こし、世の中を変えていった。信念の人の火種となっているのは、実は思い込みだといえる。
社会的な活動に限らず、ビジネスでのアイデアもそうだろう。
階段が動いたら便利だという思い込みからエスカレーターが生まれ、自分で開けなくても扉が開いたら楽だという思い込みから自動ドアは生まれた。誰かがそれは価値があると気づき、世の中もそれを求めているのだと思い込んだ。エスカレーターや自動ドアは本当に需要があったため、この世に存在するが、「これは受け入れるはずだ」と思って世に出したものの、世間には受け入れられなかったビジネスアイデアは腐るほどあるだろう。
自分にとって「価値があることだ」と思うことと現実とが一致すべきだ、という考えは強い信念となる。
(2)ものごとにはすべて意味がある
人は何ごとにも意味を見出したいと思いがちだ。
悪いことが続くと、「何か意味があるのかな」と手相を見てもらったり、星占いをチェックしたり、神社でお祓いをしてもらったりする。実際には、たまたま悪いことが続いただけで、玄関が鬼門の方角にあるとか、悪い星のもとに生まれたというのは、まったく関係ないかもしれない。
ものごとを虚無的に見て、なんとも思わなければ信念など生まれない。起きる物事にはすべて意味があるという考えは信念に結びつくのだ。
(3)周りの人も自分と同じような意識を持っている
「男は強くあるべき」「努力をすれば幸せになれる」「お金があれば心配事はなくなる」などの考えは「周りの人もそう思っているはずだ」という思いに支えられている場合が多い。そういう思いが「信念」となる。
このような考えを出発点にして、信念は固まっていく。
強い信念を持つと行動の指針となり、行動力や自信が生まれ、楽しさも生まれる。逆に、信念を失うと自信もなくなり、活気がなくなっていく。そういう意味で信念があるのはいいことかもしれない。
ただし、信念もいいことづくめだとはいえない。いい信念と悪い信念があるのだ。たとえば、あらゆる戦争は「自分が正しい」「これこそが正義だ」という信念から起きるだろう。悪い信念は悲劇を生むこともあるのだ。
次回は、常識や世間からの評価がいかに思い込みかということを解き明かしていく。こうご期待!