1900年当時、ヨーロッパのGDPは世界のおよそ40%を占めたが、2050年には15%ほどまで落ち込む予測さえある。新興国経済がくすぶり始める中、世界経済の行く末を『撤退するアメリカと「無秩序」の世紀』の著者でもある、ピューリッツァー賞受賞・WSJコラムニストが占う。

世界経済の成長が止まった?

 グローバル経済の伝統的な成長のエンジンがくすぶり始めた。多角的貿易交渉は死にかけており、グローバル化そのものが縮小しつつある

 国際的な資本移動は二〇〇七年のピーク時以来六〇%減った。マッキンゼー・グローバル・インスティテュートの報告書は、「過去三〇年間、資本市場と金融システムは急速な拡張と多様化を遂げてきたが、いまやそのプロセス(金融深化と呼ばれる)はおおむねストップした」と指摘している。

 いわゆる新興国といわれるなかでも最大の経済国はブラジルで、ロシア、インド、メキシコ、インドネシア、トルコがそれに続く。この六カ国のGDPを合わせると九兆ドル近いが、トルストイの表現を借りると、これらの国はそれぞれに不幸だ。

 ブラジルでは、物価が経済成長(二〇一三年は約六%)の二倍のスピードで上昇している。石油や天然ガスの輸出に依存してきたロシア経済は、世界的なエネルギー(特に原油)の供給だぶつきで難しい局面に置かれている。

 インド経済は二〇一〇年に一〇%成長したが、現在は五%を切っており、二一世紀に入ってから人口が二億人以上増えた国には心もとない。メキシコは、エネルギー改革という政治的に難しい問題を乗り切り、ほかの国よりうまくやってきた。しかしこれまでに八万人の命を奪い、社会と政府のあらゆる層を腐敗させてきた麻薬戦争はいまも解決していない。

 インドネシアは外資による投資規制を強化している。トルコ経済は、不動産バブルの崩壊と、エルドアン大統領の独裁的できまぐれな統治という政治リスクに揺れている。

 投資戦略コンサルタントのジェイ・ペロスキーは、「悲惨な状況にある新興国には三つのタイプがある」として、次のように語っている。

管理失敗組……ベネズエラとアルゼンチンは通貨の切り下げに踏み切った。

過剰債務組……中国と多くのアジア諸国は、消費者金融バブルで非常に厳しい状況にある。中国は極度に不透明な信用システムの安定化にようやく乗り出したばかりだ。一つ例を挙げれば十分だろう。地方政府の債務は計一兆ドルを超えるが、このうち六〇〇〇億ドル以上が年内に返済期限を迎える。

いびつな構造組……インドネシア、ブラジル、トルコ、南アフリカをはじめとする大型の国は巨額の経常赤字を抱えており、外国からの借入に依存している。二〇一四年はこうしたバランスの悪い国のほとんどで国政選挙が予定されており、柔軟な政策を取る余地は限られている。