石坂 私は「知の集合」を考えています。「知」を集めると、新しいものを生み出せる。世の中に「知」をもっている人はたくさんいますが、それを伝えたり、社会の役に立てる機会は少ない。だから、すばらしい「知」を持っている人に、当社が「場」をつくって発表してもらう。私たちはそれを吸収しながら、会社を変えていこうと思っています。
西條 お二人の事業は社会にとって大きな意味があると感じる人が多いから、お手伝いしたくなるんでしょうね。石坂産業は産廃業をリサイクル業、製造業、さらには観光業に変えていくという意味で世界のモデルになっている。
HASUNAのジュエリーは、主に発展途上国現地から搾取をするのではなく、フェアトレードにより正当な賃金を保証することで、人と社会、自然環境に配慮したエシカルジュエリーを制作、販売する会社を日本で初めて立ち上げた。「モデル」ができる意味は本当に大きくて、多くの人が社会に埋もれていた問題に気がつき、事業に共感してマネしてくれる人が出れば、さらに広まっていきますからね。
白木 ジュエリーって資本主義の象徴のように思われることがあります。ラグジュアリーで、高額で、お金が渦巻いている世界で……。でも、実はそれは地球につながっています。金も水晶もダイヤモンドもすべて地球に何億年も眠っていたもので、ジュエリーを身につけることによって地球とつながることができるし、鉱山で働いている遠い国の人たちともつながることができます。
お客様も、「HASUNAの考え方を知ってから、初めてジュエリーを買いたいと思った」とか、「結婚指輪や婚約指輪はいらないと思っていたけれど、HASUNAのジュエリーだったら一生身につけたい」という方がいらっしゃる。そういう価値を創造できる企業にしたいと思っていたので、このようなフィードバックはうれしいです。
事業の原点にあったものは
「理不尽さ」への怒り?
石坂 白木さんは、ジュエリー業を志していて、児童労働の現場を知ったのですか?
それとも、児童労働の現場の問題を解決したいと思ってジュエリー業を行ったのですか?
白木 私の場合、母親がファッションデザイナーだったこともあり、幼い頃から自分で洋服やアクセサリーをつくるのが大好きでした。大学時代にはアクセサリーをつくって、ネットショップで売っていたこともありました。
そんななか、大学時代のフィールドワークで、インドの鉱山に行ったことがあって、そこで働いている子どもたちが、あまりにもひどい生活をしていました。一日一食しか食べられないとか、素手素足で鉱山に入って、採掘の時に出る粉塵を吸いながら働いている姿を見て、電化製品やジュエリーとこの人たちとのつながりを初めて感じました。
石坂 ジュエリーがそんな労働環境から生まれている……。
白木 もちろんすべての鉱物がこのような環境で採掘されているわけではありませんが、私の目の前にいる人たちと、先進国での豊かな生活のギャップは何なのだろう、と。私たちの身の回りにある多くの製品は元をたどると、鉱山から出てくるものでつくられています。ジュエリーだけでなく家電製品なども。商品を買うときは、たくさんのお金を支払うのに、末端の現場で働く人たちにはお金が届かない。強烈な違和感が湧き起こってきました。
石坂 宝石はすごく高価なものだし、価値があるけれど、その生産の現場で起きていることを知らないで買ってしまう、というのは極めてもったいないですね。真実を知ったうえで、正規ルートできちんと買うようにしていかないと、お金をもらうべき人がもらえていないという環境が出てくる。
白木 そうなんです。