そして、ITツールは飛躍的に発達し、知恵の創出に対して、集団的活動を可能にしている。遠隔地との会議、情報の共有や利用、集合知の活用、驚くほど簡単に多くの人とともに仕事ができる時代になった。履歴を残せることで、フリーライダーの発見も容易になるからサボれないし、蓄積された情報の再活用も可能だ。このような時代にあっては、あらゆる成果を特定の「個」に紐づけて評価し、分配するという個人主義的な考え方では、創出された知を上手に活用できない。

 また、分配できるパイ自体もまた増加しつつある。この趨勢が短期的に終わる可能性はかなり高いものの、企業は最高益を更新し、労働分配の総額も増えつつあるのだ。

 このように考えてみると、モラールからモチベーションへ転化していった原因の多くが、すでに無くなってしまったのではないかと思えるのである。

 そんなことから、全体や集団をベースにした、単純な士気ではない、新しい形の「モラール」の向上を主とし、個を際立たせない組織運営に振り子を戻す可能性が生まれてくる。外国企業のビジネスリーダーが獲得する巨額の年俸には驚愕するしかないが、日本国内だけを考えるのであれば、給与の分配政策も含めて、集団全体に焦点を当てる考え方のほうが時代にマッチしていているのではないか、と思えるのである。

(構成/大高志帆)

※なお、本記事は守秘義務の観点から事案の内容や設定の一部を改変させていただいているところがあります。