また、7月18日、党機関紙《人民日報》も、ソウル、ベルリン、バンコク、ワシントン発で“国際世論は日本が一連の安保法案を強行的に採決したことを強烈に批判している”という記事を掲載し、同国メディアや専門家の声をピックアップしつつ、「日本が安保法案を強行的に通過させたことは、地域ないしは世界の平和と安定に脅威を与えるものだと、国際世論は普遍的に思っている」としている。

 中国メディアは、今回の通過を米国政府が歓迎している点も静かに伝えている。

危機感を抱きながらも外部に対して
対日重視を表明する中国共産党

 結論で述べたように、中国政府はメディアや世論と比べて抑制的な態度を保持しているように見える。

 外交部の華春瑩報道官は、7月16日の定例記者会見にて、中国政府の立場を次のように表明した。

「歴史的な要因によって、日本の軍事安全を巡る動向はアジアの隣国や国際社会の高度な注目を浴びてきた。日本の衆議院が新安保法案を通過させたことは、戦後において前代未聞の動きであり、日本の軍事安全保障政策に重大な変化をもたらしうるものである。人々は、“日本は専守防衛政策を放棄するのか、戦後長期的に堅持してきた平和的発展の道を変更するのか”と疑う理由を持っている」

 このフレーズを読みながら、私は、中国共産党指導部が、体制内部では日本の安全保障を巡る政策を徹底分析し、動向を深く追っていく一方で、外部に対しては、対日関係重視という観点から、比較的抑止の効いた立場を表明していくのではないかという考えを頭に浮かべていた。

 そんな考えを一段と深化させたのが、翌日の17日午後、李克強首相が日本の谷内正太郎・国家安全保障局長を権力の中枢である中南海に招き入れ、会談した経緯である。李首相は戦後70年という観点から歴史問題で日本を牽制することは忘れなかったし、昨今の安保法案を巡る動向もあってか、日本に引き続き平和国家として歩むことを促したが、大筋は日中関係を前進させていくべきというトーンであり、その過程に日本の一部メディアが“異例の厚遇”と修飾した谷内局長の中南海入りを位置づけるものであった。

 また、谷内局長はカウンターパートである楊潔チ(チの文字は竹かんむりに“褫”のつくり)外交担当国務委員と夕食を含めて5時間半に渡って協議をし、常万全国防部長とも1時間会談した。これらの動向が、戦後70年という歴史的には節目を、政治的には敏感性を、外交的には複雑性を示唆する時期において、日本側だけでなく、中国側としても日中関係を安定的に発展させたいという共通認識に立脚していることは、疑いないように思える。