東芝が組織ぐるみの
不適切会計に走った背景は何か

 昔から、企業が不適切な会計処理によって利益を水増しする事例は後を絶たなかった。実際の経営者にヒアリングしても、「手段を選ばず利益を増やしたいと思ったことは何度もある」との声が多かった。

 しかし、多くの経営者は、「一時的に利益を増やしても、それが発覚して信用を失うコストの方が大きい」と思いとどまったという。確かに、不正の発覚によって企業が信用を失うデメリットの方が、一時的に利益を膨らませるメリットよりも大きいことは明らかだ。 

 問題は、ライバル企業との競争や経営者同士の勢力争いなどによって、不正発覚のリスクを忘れてしまうことだ。東芝のケースでも、経営首脳陣内部の確執などが取りざたされている。同社OBに聞いてみた。彼は、ある時期の新旧経営陣の間に大きな亀裂があったようだと話してくれた。

 また、同社のライバル企業である日立の業績が大きく回復したことに対して、経営陣が一種の焦りを感じた可能性があると指摘していた。ライバル企業の業績がV字型回復を示し、しかも前任の経営者との軋轢があったとすれば、「何が何でも収益拡大」と考えたのかもしれない。

 そうした状況が、本来であれば不適切な手法を抑えるべき経営者を、“収益至上主義”の心理状態にさせてしまった可能性がある。仮に経営者がそうした心理状態になってしまうと、現場の人たちの“利益水増し”の心理を抑えることは難しい。

 そうなると、不適切会計処理に歯止めを掛けることは困難だ。本来、働くべきコーポレートガバナンスの機能が鈍ってしまうのだ。その結果、わが国を代表する大手企業である東芝で、組織ぐるみの不適切会計処理に走ってしまった。