人が幸せになることを目指さないと、
ビジネスはうまくいかない

佐々木「「本気でユーザーのことを考えて、ユーザーが本当に求めているものを考え、探し抜けば、見えてくるんだ」という考え方に、確かにそうだな、もう一歩先を考えなければ…と反省させられました。」

佐々木 何でも説明できますよ(笑)。後半で紹介されている、「ゲームを辞めてしまったユーザーに、その理由を尋ねた」というエピソードも「なるほど!」と考えさせられました。「飽きたから」と答えた人が非常に多かった。そのとき、普通ならば「ならばもっと飽きないような新しいゲームを作ろう」と思うところを、森川さんは「なぜ飽きるんだろう?」と考えたというのがすごい。ユーザーとしては「飽きた」と表面的な気分だけを話すけれど、よくよく掘り下げて聞いていくことで、「ゲームに負けたときに嫌な気分になった」、さらにいえば「お金でアイテムを買った人と戦って負けたときに嫌な気分になった」から止めてしまったとわかった。

森川 人のことがわからないと、ビジネスはうまくいかない。人が幸せになることを目指さないと、続かないですからね。

佐々木 「本気でユーザーのことを考えて、ユーザーが本当に求めているものを考え、探し抜けば、見えてくるんだ」という考え方に、確かにそうだな、もう一歩先を考えなければ…と反省させられました。

森川 経験が長くなり、成功体験が増えると、どうしてもどんどん自分が「その道の専門家」になっていきますよね。周りも持ち上げるし。そうなると、一般ユーザーとの乖離が生まれて、ユーザーの気持ちが分からなくなるんじゃないか…という怖さがあるんです。比ゆ的な表現ですが、もし自分が空を飛べるようになったら、道を歩く人の気持ちってわからなくなりますよね。そうなったら、もう靴のデザインなんて絶対にできない。

佐々木 その点でも、『シンプルに考える』の中で紹介されている考え方が実に潔いですよね。「一生懸命ユーザーの気持ちを考えても、わかり切れない」と。そして、「社長の私が決めるとクオリティが下がるから、一番ユーザーを見ている現場の人たちに任せる。誰に任せるのかを決めるのが私の仕事だ」と。

森川 「C CHANNEL」は、「女子のための動画ファッションマガジン」という位置づけなのですが、平気でユーザーに「かわいくない」って言われちゃうんですよ。でも、「かわいい」という言葉自体が意味するものが変化していたり、多様化しているから、「『かわいい』と『かわいくない』の違いってなんだろう…」と考え始めると、夜も眠れない(笑)。しかも、Aさんの「かわいい」とBさんの「かわいい」が違ったりする。悩ましいですよね。だから、「かわいい」に詳しい人を連れてこようと思っています(笑)。

佐々木 (笑)。それも本に書かれていますよね。「会社は人がすべて」であり、「すごい人がいれば、別のすごい人を引き寄せる」と。逆に、間違った目的を持つダメな人の割合が高くなると、「ユーザーのために」と頑張っている人がやりにくい雰囲気になり、優秀な人が去っていく。

森川 純粋に、すごい人の中にいる方が刺激を受けるし、仕事も絶対に楽しいんですよね。ダメな人ばっかりの中にいると、自分もだめになるし、疲れちゃうし、やる気もなくなるし、それが周りにも伝わるから周りもやる気をなくすという悪循環に陥る。

佐々木 その考え方にも、とても共感します。例えば様々な分野のプロフェッショナルが集まっている「森川会」の人が一緒になんかやったら面白そうですよね。――でもね、本の中で1ヵ所だけ、どうしても腑に落ちない部分があるんです。

森川 おっ、どの部分ですか?