もっとその人にぴったりの
大事な居場所があるんじゃないか
佐々木 「率直にモノを言う」という項目がありますよね。あいまいな表現が、仕事をダメにすると。率直に言うこと自体は、もちろん悪いことではないと思うのですが、人事評価においても、360度評価をもとに「いなくてもいい」と評価された人には、その事実を率直に伝えるとありましたよね。…私は『伝え方が9割』を通して、「相手の気持ちを量り、相手の目線に立って伝え方を考える」ことを提案してきたので、そこがどうも消化できなくて。それに、森川さんの口から「あなたはいらない」って言葉が出てくるイメージが、どうしても湧かないんですよね。
森川 決して「あなたはいらない」とズバッというわけではないですよ(苦笑)。どんなに頑張っても、周りに「いなくてもいい」と評価されてしまうということは、きっとその人にとってココは幸せになれる場所じゃない。もっとその人にぴったりの、大事な居場所があるんじゃないか…という話をしています。その際の「伝え方」は非常に重要で、「どうしてあなたは一生懸命頑張っているのに、周りには伝わらないのか。その本質はどこにあるんでしょうか」と同じ目線で話し、ディスカッションします。すると、だいたい何かしらの理由が出てくる。「実はほかにやりたいことがあるから、今の仕事を頑張ってはいるけれど気持ちが入らない」とか「何か心配事や問題があって、今は集中できない状態にある」とか。その過程で、その人にとってベターな、別の道が見えてきたりする。
佐々木 原因を一緒に探ったうえで、「それならばここで頑張るよりは、自分のやりたいことをやったほうが幸せではないか」という結論に至るまで話し合うということなんですね。
森川 そうです。日本人って、問題を先送りしがちなのですが、今の状態をきちんと正確に把握して向き合ったほうがシンプルだし、問題解決の近道でもある。だから、悪い評価を受けてしまった人とは、何回も何回も議論を繰り返すんですよ。その中で、僕が見えてない部分も、相手が見えていない部分もお互いにクリアになる。
佐々木 なるほど!よかった、すごく腑に落ちました(笑)。
佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年大手広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6ヵ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。twitter:@keiichisasaki Facebook:www.facebook.com/k1countryfree HP: www.ugokasu.co.jp