それぞれは小さな部門ですから、自部門だけの歩留まりを考え、不良品を出さないようにして、採算向上を図ればいいわけです。狭い範囲ですからそのことを一生懸命考える人がいれば部門経営が成り立ちます。そのように工程を切り、それぞれでつくられたものが社内を次から次へと流れていくようにしました。管理会計学的に言いますと部門別採算システムを構築したわけです。そうした組織はしょっちゅうメンバーや大きさが変わって、アメーバのごとく姿形を変えるものですから、いつしかアメーバ経営と呼ばれるようになったのです。

 このやり方は部門別管理会計制度として定着し、非常にうまくいきました。まさに京セラ発展のノウハウだったと思っています。

事業に対する好奇心は尽きることがない

――経営者は非常にエネルギーを必要とする仕事です。これまで五〇年間、手を抜くことなく第一線の経営者として継続してこられた秘訣はどこにあるのでしょうか。

稲盛和夫氏に聞く「経営の心、人生の心」(下)Photo by Aiko Suzuki

 強いて挙げれば健康であったということと、根がクソ真面目なものですから一生懸命頑張ってきたというくらいでしょうか。私は若い頃から今日まで、「謙虚にして驕らず」を座右の銘としてきました。どんなに境遇が変わろうが、成功しようが、謙虚にして驕らないことが私の生き方となっているのです。

 先日も盛和塾の全国世話人会を都内のホテルで開催しまして、その後数十名の方々と食事をともにしました。それはそれは立派な食事だったのですけれど、実は私は豪華な料理を食べたいとか高い服を着たいとかいう欲望はまったくありません。いまは豊かになって、お金に不自由することはなくなりましたが、食事は牛丼でもいいくらいでして、実際いまも時々食べるのですが、贅沢をしたいという気持ちは不思議なくらいありません。

 先日の集まりでは立派なホテルに私も泊まりましたけれど、こんな高い部屋は必要ないからもっと安い部屋に替えてほしいと思いました。いまでも、そんな思いがどうしても出てくるのです。けっしてケチではないのですけども――、貧乏性なのでしょうね。寄付は個人でもたくさんしているのですが、自分で使うお金に関しては非常に慎ましいところがあります。家も四〇年くらい前につくった京都の自宅にいまも住んでいまして、別荘も持っていません。

――私生活では本当に慎ましやかでいらっしゃるわけですね。しかし、個人の欲はまったくなくとも、事業に対してはいまも大きな欲をお持ちのように見えます。

 いや、事業の場合も欲ではないですね――。欲ではなく、好奇心です。事業に関する好奇心は尽きることがありません。ただ、私生活の面での好奇心は、まったくないわけではないのですが、あまり持ちません。