資金に乏しく長期に渡って低迷を続けたMLB・オークランド・アスレチックスのゼネラルマネージャー(GM)ビリー・ビーン氏が、このセイバーメトリクスを用いたチームづくりと選手起用を行い強豪チームにしたことから知られるようになった。その過程を描いたノンフィクション『マネー・ボール』はベストセラーになり、ブラッド・ピット主演で映画化もされた。

 三木谷氏はこの『マネー・ボール』を読み、セイバーメトリクスに目覚めたらしい。本業の成功を見ても解るように時代の流れを的確につかみ新たなビジネスモデルをつくった。合理的な発想をする人物のようだし、そこには様々なデータの分析も欠かせなかったはずだ。その考えから好成績を残せないチームスタッフを見た時、選手起用にも口出しせずにはいられなくなったのではないだろうか。

 ただし、アスレチックスのビーン氏はチームづくりの専門家であるGMだが、三木谷氏はGMではなくオーナーだ。オーナーが選手起用まで言及するのは、やはり越権行為と言わざるを得ない。

 筆者は大企業グループの社長のインタビューを長年行ってきた。そのなかでも実績をあげている社長からは「現場を重視している」という言葉をよく聞いたものだ。現場で働く社員の声を聞き、職場環境をチェックするわけである。そうして意識を共有し環境に問題があれば改善する。しかし、現場を預かるリーダーには事業の方向性は示すものの細かな指示までは出さない。現場やり方を尊重し任せるのだ。それがトップのあり方だろう。

 日本のプロ野球球団のオーナーで、ほとんど悪評がない、というより多くの選手や野球関係者、ファンから慕われ尊敬された人物がいる。1973年から30年にわたって日本ハムのオーナー(初代)を務めた大社義規氏だ。野球好きで知られ、球場には時間が許す限り通って観戦した。そしてチームが低迷している時も不機嫌な顔は一切見せず、コーチングスタッフや選手を激励していたという。

 大社氏は2005年に亡くなったが、2009年に野球殿堂入りの特別表彰を受けたのは、そうした人柄が評価されたことや、多くの野球人の後押しがあったからだろう。ちなみに球団オーナーとして野球殿堂入りしたのは正力松太郎氏(巨人)、小林一三(阪急)、田村駒治郎氏(松竹)、永田雅一氏、佐伯勇氏(近鉄)、松田耕平氏(広島)と大社氏の7人だけだ。

 オーナーとはかくありたいものである。