紙巻きタバコの煙に含まれる数々の有害物質の削減に成功した、火を使わないタバコを全国で発売するフィリップモリスジャパン。紙巻きタバコユーザーの心をつかむ事ができるだろうか?

20億ドルをかけて開発した
“害の少ないタバコ”

「短期的には紙巻きタバコも併売しますが、長期的には、すべてiQOSに替えていただければ。最大かつ、最善の代替物だと思っています」――。フィリップモリスジャパンが9月から順次、全国で販売する次世代タバコ「iQOS(アイコス)」。同社のローラン・ボアサール社長は、こう自信のほどを語った。

キットの本体価格は9980円(税込)。タバコ葉(ヒートスティックと呼ぶ)は20本で460円。今年9月から12都道府県で販売し、来年度いっぱいで全国展開する予定だ

 iQOSは火を使わず、タバコ葉を電子機器で加熱して吸うもの。紙巻きタバコとも違うが、リキッドを加熱して吸う、いわゆる電子タバコとも異なる商品だ。

 健康被害が大きいとされる紙巻きタバコの有害物質を極力削減し、一方で味わいや喫煙体感はなるべくそのままに。そんなコンセプトで開発された次世代のタバコだ。

 これまで開発にかけたコストは20億ドル(およそ2500億円)に上る。機器の開発はもちろんのこと、喫煙者本人や、周辺の人々に与える害が本当に少ないのかどうか、医薬品と同等の非臨床試験と臨床試験を行っているためだ。

 iQOSを吸うと白い煙のようなものが出るが、これは煙ではなく蒸気。紙巻きタバコの煙には、ニコチンのほかにも多数の有害物質(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、一酸化炭素、ベンゼン、トルエンなど)が含まれることが分かっている。ちなみに、タールと呼ばれるものは、実はこうしたニコチン以外の有害物質の総称。紙巻きタバコの煙の主成分は、水とニコチン、そしてこれら有害物質の集合体であるタールだ。

 iQOSは蒸気しか出ないため、紙巻きタバコの煙と同じ測定方法は使えない。そのため単純な比較は難しいのだが、「蒸気中の成分のほとんどは水とニコチン、そしてグリセリン」(フィリップモリスジャパン)。一方、さまざまな有害物質については、58の物質について蒸気を測定したところ、紙巻きタバコに比べて、平均で9割以上は減っていた。つまり、タール内の有害物質も大幅に削減できているということだ。

 iQOSを吸った部屋の空気も測定したが、「何も吸わない部屋と、ほぼ同等という結果が出ました」(同)。つまり、紙巻きタバコで嫌われる副流煙被害も、ほぼないのだ。実際、禁煙の編集部でiQOSを吸っても、ニオイはほとんど気にならなかった。