「フィンテック」と呼ばれる、金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を融合させた造語が、日本の銀行界でもにわかに注目を集め始めた。
アップルやグーグル、アマゾンといった米国の巨人たちが、ITを駆使して決済や融資といった銀行業務への“侵略”をしていることに対する危機感が背景にある。メガバンクの頭取自らが海外のフィンテック企業へ接触を試みるまでに本気度は高まっている。
それに突き動かされるかたちで、金融庁の金融審議会(首相の諮問機関)で銀行の規制緩和議論が進んでいる。金融持ち株会社が傘下にフィンテック企業を持ちやすくしようというのが、大きな流れだ。
そして、3メガバンクや地方銀行の代表が規制緩和の要望を取りまとめて金融審議会の場で発表。それぞれフィンテックを活用するための要望を盛り込んできた。
しかし、地銀界では一部の先進的な地銀を除いて、フィンテックなど眼中にないというのが実態だ。メガバンクすらこれから取り組むテーマであり、日進月歩でイノベーションが進むITの世界と、地方に身を置く超保守的な地銀界の相性は最悪といっていいからだ。
実は地銀にとって規制緩和の“本命”は別にある。それは不動産事業で、中でも不動産の仲介業だ。「地方では大手の不動産会社がなく、不動産情報が地銀に集まる」(地銀関係者)。それを生かせば大きなビジネスになるからだ。