規制業種の銀行にとって千載一遇のチャンスが来た。首相の諮問機関である金融審議会で規制緩和案が話し合われているのだ。業務範囲の拡大によるIT活用や異業種進出などがうたわれたが、その場へ呼ばれた銀行は、議論の中では傍流だったある問題を持ち込んだ。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
銀行グループがアマゾンや楽天のようなEC(電子商取引)モールの運営をする日が来るか。はたまた、ITベンチャーを買収して傘下に収める日が来るか──。
5月19日、金融制度について議論する首相の諮問機関、金融審議会で「金融グループをめぐる制度のあり方に関するワーキング・グループ」の第1回が開催された。
主な議題は、銀行持ち株会社の機能や業務範囲などを制限している規制の再検討だ。環境の変化で今の実態に合わない規制を改め、銀行グループの競争力を高める算段だ。背景には「金融環境が大きく変わり、これまでのビジネスモデルでは成り立たない」(福田慎一・東京大学大学院教授)といった危機感がある。
その金融審の中で、銀行グループの業務範囲拡大によるECモールの運営やIT事業への積極投資、ベンチャー企業の買収などをできるようにする規制緩和案が挙がったのだ。
そして、5月26日に行われたワーキング・グループの第2回では3メガバンクの経営企画部長らが呼ばれ、銀行側が現状認識や規制緩和要望について語った。その中には前述の目新しい、華やかな案も含まれてはいた。しかし、実はそれまでの議論の中では傍流だった、ある宿願も銀行界の要望として俎上に載せてきたのだ。