リクルート事件の“トラウマ”
「政治家は悪い」と思い込む30~40代
こんにちは、鈴木寛です。
来年夏の参議院選挙が、選挙年齢が18歳に引き下げられて最初の投票となる公算が高くなりました。新しい有権者の中には一部の高校3年生も含まれます。連載第33回で取り上げたように、高校生にどう政治教育をしたらいいのか、模索や議論が続いています。
しかし、高校生だけではありません。そもそもの話、学校教育では政治と真正面から長く向き合ってきませんでした。小学生には小学生なりの、中学生には中学生なりの、そして親御さんには親御さんなりの「政治教育」というのも、連動して見直していかなければなりません。
ダイヤモンド・オンラインをお読みの読者の中には、30~40代で小学生のお子さんがおられる方々も多いと思います。皆さんにとって「政治」というと、どんなイメージがあるでしょうか?
30~40代の皆さんは、もしかしたら政治に対してダーティな印象を持っている方もいるかもしれません。最近も、若手議員の未公開株購入を巡る金銭トラブルが報じられていましたが、皆さんが小・中学生のとき、1988年のリクルート事件が起きました。歴代の総理経験者を含め、官僚トップ、NTT会長らにリクルート関連会社の未公開株が渡されていたことが発覚。元官房長官が受託収賄で有罪となるなど、戦後最大規模の贈収賄事件となりました。
子どもの頃に事件の報道が連日あったため、政治にあまり詳しくない30~40代と話をすると、「リクルート事件の影響で政治家は悪いことをしていると思うようになった」という感想をしばしば聞かされます。事件が“トラウマ”になっているのです。
リクルートのような事件が報道されるたびに「政治とは汚いもの、けがらわしいもの」というイメージが若い世代に形成されてしまったことは本当に遺憾なことですが、しかし、政治家や官僚の悪い側面ばかりに目を向けて、自分と関わり合いのないことだと割り切ってしまうのはある種の思考停止です。