ミドリムシの増産に成功すれば
食糧危機を解決できる
では、なぜミドリムシが地球を救えるのか。出雲氏がそれを確信したのは、東京大学の近藤次郎名誉教授が1989年に発表した「地球環境を閉鎖・循環型生態系として配慮した食料生産システム ユーグレナの食料資源化に関する研究」という1本の論文に接したことがきっかけでした。
ミドリムシのポテンシャルは本当にすごい。
ミドリムシは植物と動物の両方の性質を持っているので、両方の栄養素を作ることができる。その数は、なんと59種類にも及ぶ。ミドリムシを大量生産し食料資源化ができれば、将来、日本に食料危機があったとしても、輸入食料に頼らずに必須栄養素を賄うことができる。
しかも農地ではなくてプールで生産すればいいので、工場跡地や砂漠のような土地はもちろん、バングラデシュのヒ素で汚染された土地でも生産できる。さらに2000年頃の日本ではまだ盛り上がっていなかったが、「将来、必ず地球温暖化が大きな問題となる」ということが言われ始めていて、そうなったときはミドリムシにCO2を減らしてもらうことができる。はるか5億年前からCO2を吸収してきたミドリムシは、高等植物よりも圧倒的にCO2の処理能力が高い(専門的には、光合成能が高い)ので、森林が減少した分の酸素の生産を補うことが可能になるのだ。
さらにさらに、世界人口は爆発的に増えることが予測されているが、ミドリムシを増産することで、地球環境を維持しつつ、世界の人々は健康に暮らすことができるだろう、と論文には書いてあった。(50~51ページ)
ただし、この論文は「ミドリムシの大量培養が成功したら」という仮定のもとで書かれたものでした。つまり、この時点でミドリムシの培養には、世界でまだ誰も成功していなかったのです。