イノベーションを起こすためは、何よりもイノベーションを起こす当事者がいなくてはなりません。すなわち、イノベーターです。イノベーターと言うと「イノベーションを起こした人」というイメージを抱きがちですが、ここでは「現在および未来にイノベーションを起こせる人」と捉えています。ですから一部の特別な人たちではなく、誰もがイノベーターになりうると考えます。では、イノベーターはいったいどんな人たちなのでしょうか。まず、組織の中でイノベーションを起こせる人の特徴を端的に言うと、ヨソ者、バカ者、若者です。順を追って説明しましょう。新刊『なぜ「エリート社員」がリーダーになると、イノベーションは失敗するのか』から、抜粋してお送りします。
ヨソ者は染まらないことが強み
ヨソ者とは、組織の外部者もしくは外部から入ってきた人です。一つの組織の中で長く活動している人を組織人と呼ぶなら、組織人は組織の常識にとらわれて、自らが置かれている立場や役割から抜け出すことが非常に難しいのが現実です
。当人が組織で活躍できていること自体が、組織の常識をうまく会得し、その範囲で働いていることを証明しています。組織の常識は、組織のしがらみでもあるのです。
ヨソ者は、その点で大胆かつ無責任になれます。無責任は言い過ぎと思われるでしょうが、既存事業の責任にこだわり過ぎるとイノベーションが覚束ないのもまた事実です。ヨソ者は既存事業と一定の距離を置くことができるので、ある程度無責任でいられます。
また、ヨソ者であるがゆえに組織での成功体験を積んでいないことも、イノベーションを起こすうえで有利に働きます。成功体験は人をしばります。そして成功が続くと、どうしても守りに入ってしまいます。それが新たな思考、大胆な行動を邪魔する壁になってしまうのです。
では、ヨソ者とは具体的にどんな人材でしょうか。一つは、新卒で入社してくる学生たちです。組織の色や常識にまだ染まっていない新卒者の考え方や行動に組織が触発され、新しい何かが生まれないとも限りません。
もちろん、ヨソ者は新卒学生に限りません。中途採用社員、業務委託社員、契約社員もヨソ者たりえますし、異動で他部門から来た社員もそうです。業務提携やM&Aも広義には組織にとってのヨソ者獲得手段とも言えます。ヨソ者のヨソ者たるゆえんをしっかり評価し、胸襟を開いてホンネの対話を繰り返しながら、彼らを活かしきることが重要です。