バカ者は強さを活かす

 次に、バカ者について考えてみましょう。この場合の「バカ」は、知識が足りないとか、理解力が足りないということではありません。何かに熱中するあまり、周囲や他者への配慮が欠如しがちな人や、不器用であるがゆえに一つの道を歩き続ける人、というイメージです。『釣りバカ日誌』や『空手バカ一代』の主人公があてはまりそうです。

 一つのことに没入するあまり、修行僧のような雰囲気を漂わせている人が、みなさんの会社にもいませんか? こだわればこだわるほど不器用さが際立ち、周りから変に浮いてしまっている人。そういう人がバカ者ですが、実はこういう人たちこそがイノベーターとしての大きな可能性を秘めた人材なのです。

 一つのことに没入するあまり、修行僧のような雰囲気を漂わせている人が、みなさんの会社にもいませんか? こだわればこだわるほど不器用さが際立ち、周りから変に浮いてしまっている人。そういう人がバカ者ですが、実はこういう人たちこそがイノベーターとしての大きな可能性を秘めた人材なのです。

 スティーブ・ジョブズがバカ者の典型です。カリスマ的な物言い、不屈の意志、目的のためならどのような事実でもねじ曲げる熱意が複雑に絡み合ったもの。これが、ジョブズがアップルで駆使した力です。

 この現実歪曲フィールドと呼ばれる能力は、バカ者のジョブズがイノベーションを実現するために考え出したコミュニケーション術と言っていいでしょう。この術にはまった人は、彼に屈服せざるをえませんでした。

 日本企業では、ジョブズのようなバカさ加減がなかなか表に出てきません。仕事と、自分が本当にやりたいことを明確に峻別し、職場ではまじめな組織人としての顔しか出さない人が多いのでしょう。しかし、そういう人の中にも、稀代のバカ者がいる可能性が大いにあります。そのような隠れたバカ者をどう発掘するかが、イノベーション創出のカギを握っているのです。