東京オリンピックの新国立競技場の設計とエンブレムの変更に伴い、「税金で賄われたこれまでの出費がムダになる」という議論が起きています。これはまさに行政改革の観点からの意見ですが、最近は、それ以外にも行政改革が関係する政策論議が2つあります。そこから分かることは、行政改革の正しい位置づけをしっかりと意識しないと、政策がイマイチの結果を招きかねないということです。

行政改革の視点を欠いた
「政府機関の地方移転」への疑問

地方創生の一環として重要な中央省庁や国の機関の地方移転。しかし、誘致の提案があった中央省庁はそのうち文化庁を含むわずか6庁だった

 まず、論議が起きている点の一つは、政権が地方創生の一環として進めようとしている中央省庁や国の機関などの地方移転です。

 政府の発表によると、東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県以外の43道府県を対象に政府機関の誘致の提案を募集したところ、計69機関の誘致の提案があったとのことです。

 政府機関の地方移転が東京一極集中の是正に貢献するのは間違いなく、鹿児島県以外の42道府県から提案が提出されたということも、それ自体は非常に良いことだと思います。しかし、問題はその中味です。報道をベースに誘致の提案のあった69機関の内訳をみると、

・霞ヶ関の中央省庁:6
 (文化庁、消費者庁、気象庁、中小企業庁、特許庁、観光庁)
・国の研究所、研修所:21
 (社会保障・人口問題研究所、国立公文書館、国際協力機構など)
・独立行政法人:42

 となっています。

 つまり、道府県の提案のうち中央省庁は1割弱に過ぎず、それ以外が9割強を占めており、特に独立行政法人は提案全体の6割強を占めているのです。

 これは、行政改革の観点からは望ましくない可能性もあると言わざるを得ません。そもそも独立行政法人の中にはムダな組織、即ち存在意義が疑問なのにもかかわらず、天下りと予算の受け皿として存続し続けているものが少なからぬ数存在するからです。そうした組織は、地方移転の前にまず行政改革の観点から統廃合を進めるべきです。