外国人だって日本の味が好きだ

 つまり、東京立ち飲みバルの特徴は五島列島の鮮魚とスペイン料理の両方が味わえることだ。しかも、フィッシュ・アンド・チップス(イギリス)、カプレーゼ、各種パスタ(イタリア)、海老のグラタン(フランス)、馬刺し(熊本県)まである。

 同店をひいきにしているのは日本人だけではない。近所のホテルに宿泊している西洋人観光客もよくやってくる。彼らは「せっかく日本に来たのだから」と、ワインやシェリーではなく、日本のビールや焼酎を飲んでいる。つまみは五島列島産の真鯛のカルパッチョやバラモン揚げ(五島列島の名物、揚げかまぼこ)だ。日本の味をスペインの雰囲気のなかで楽しんでいる。

スペインの雰囲気で、<br />五島列島の鮮魚を味わう新橋のバル。<br />和食党オヤジと欧風料理好き女子が楽しく共存!

 シェフは片川立朗。63歳。

「私は結婚式場、経産省の食堂などで料理長をやっていました。この店には定年後にゆっくりしようと思って入ったのですが、とんでもありません。ここほどさまざまな国の料理を出す店はありませんよ。しかも、ガスの火口はふたつしかない。あとはオーブンがひとつあるだけ。

 そのうえ、お客さんは飲む人よりも料理を食べる人の方が多い。毎日、てんてこ舞いで、こんがらがっちゃってます。

 たとえば、一匹の魚をさばいて、刺身やカルパッチョを作る。頭は兜焼きにする。残った身はバターと醤油で蒸して出します。その間、オーブンでピザを焼きながら、パスタを茹でる。それが終わったらイベリコ豚のメンチを揚げて、つぎは五島うどんをカルボナーラにしたものを用意する…。自分でもよくやっていると思います」

 彼の言う通りだ。毎日、大車輪で働いている。定年後に勤めてはいけない店ともいえる。