新しく3つの層を顧客に変える

山口 あと、入山さんがおっしゃったように、ブルー・オーシャンは「市場の境界線を引き直して、新しい顧客を掘り起こすこと」ですが、受験サプリは完全にそうなっているんです。例えば高校3年生は約120万人います。センター試験を受ける人は55万人います。その55万人のマーケットでいかに生徒を獲得するかという戦いが広げられているんです。

 さらに僕らの試算によると、この55万人の中で予備校に通っている人はおそらく30万人ぐらいです。そして売上げから逆算すると、一人の受験生が年間約50万円ぐらい落としている市場です。

入山 なるほど、この狭いパイを予備校業界全部で取り合ってるんですね。

山口 そうなんです、規模が見えてしまっている市場を奪いあっているんです。そこで、我々がまずターゲットにしたのが、「塾に行きたくても、値段が高すぎて諦めている層」や「地域に良い塾がないから、学校での勉強だけで済ませてしまっている層」です。ブルー・オーシャンがいう、「従来の顧客の隣にある層」です。

 次に狙ったのは、「塾と受験サプリの併用利用」の層です。塾は値段が高いので、英語・数学だけといったように、科目を絞って受講する人も多い。だから理科社会とか古文とかまで取れないんですね。受験サプリでは、こういった「特定の科目だけを安くとりたい」ニーズも吸い上げています。これも市場の境界線を引き直したといえますね。

入山 なるほど、なるほど。センター試験を受ける人などは、沢山の科目を勉強しないといけないですもんね。

山口 3番目の市場が、実はいま爆発的に伸びています。それが、学校での利用です。例えば、偏差値50前後の学校の学生は、能力も進路も多様です。しかも、この偏差値の中盤層は、実は地頭が良くて、本気でやれば成績が一気に上がる層が一定数いるんです。中学の内容からやり直せば、もっと伸びる生徒もいるだろうけれど、学校の授業はカリキュラムに沿ったペースで、日々授業を進めるしかない。先生方はそれに対して、すごく葛藤を抱いているんです。

 受験サプリは、ウェブ上で問題を解いてもらうと、どこからやり直さなきゃいけないというサジェスチョンが出るんです。「君は数学は高校1年生レベルだけど、英語は高校2年のここのカリキュラムまではわかっているから、ここから先に進もう」とか。その指示に基づいた授業動画を生徒が見て、先生達がそれを補助する形で使ってくださったりしているんです。

入山 個人レベルでカスタマイズできる。今までの一貫教育だと、教室で同じことを1人の先生が教えないといけなかった。それが個別の進捗に合わせて対応できるんですね。

山口 そうです、そうです。学年平均レベルではなく、個人の習熟度レベルで学べるんです。そうなると、やっぱり生徒も喜ぶんですよ。勉強って自分で「わかった」って体感できると、次も知りたくなってくるじゃないですか。

 逆に、「今日もわからないのに、また先に進んでしまった」と思ってしまったら、そりゃあ勉強を嫌いになってしまいますよね。先生もそういった気持を感じ取りながら、授業をするのはキツい。だから受験サプリは先生にも大歓迎されています。結果、授業中や放課後に補助教材として活用される部分で、非常に売り上げが伸びているんです。受験サプリの値段なら、学校の教材費の中でも賄えますし。