人道主義・高福祉国家の理想
スウェーデンが直面する現実

 スウェーデンにおいてはEUからの離脱が大きな議論となっているわけではないが、先に述べた欧州の抱える諸問題が国家のあり方に影響を与えかねない状況となっている。スウェーデンは平和主義、人道主義、高福祉国家という観点からは模範的な国家と見られている。国民一人当たりの所得も日本の約1.5倍と高く、高税負担ではあるが社会保障水準は高い。女性の社会進出は目覚ましく、専業主婦の割合は労働人口のわずか2%、女性国会議員は43.5%を占め、管理職に占める女性の割合は36%にも上っている。

 高齢化社会の労働力不足を補うという必要性もあり、諸外国からの移民の受け入れに積極的であり、外国生まれもしくは両親が外国生まれの国民は全体の20%を占める。紛争地域からの難民も欧州内で人口比最大規模の受け入れ国となっている。

 このように理想主義に基づき国家が運営されてきたスウェーデンにも異変が起こっている。2014年9月の総選挙では、8年続いた中道右派連合から社民党、環境党を中心とした少数連立政権へと政権交代が行われた。この選挙で、多大な難民の受け入れに伴う社会不安を背景に、排外主義を掲げるスウェーデン民主党が13%の得票を得て第三党に躍進し、国会でキャスティングボートを握る結果となったのである。与党の提案した予算案も民主党が反対に回り成立せず、結果的に政権与党と中道右派連合の合意による暗黙の大連立で危機を乗り切った。

 英国やスウェーデンで急速に排外主義的政党が頭角を現しているのは、リベラルな理念を掲げて高福祉国家を実現してきたのに、なぜ他国からの移民や難民に生活を圧迫されなければならないかという、国民の素直な感情の発露なのだろう。スウェーデンの美しい街角に外国からの流民が物乞いをする姿が増えているのを国民が目の当たりにすると、このような感情は切実なものとなっていく。果たして欧州の伝統的政党は理想と現実の格差にどう向き合っていくのだろう。