こうしたパート労働者の賃金低下や、相対的に賃金水準の低いパート労働者の比率の高まりにより、雇用者全体で見れば所定内賃金の上昇率は大幅に抑制され(図表6)、物価上昇を考慮した実質ベースでは7月にようやく前年比マイナスを脱したにすぎない。

(出所)厚生労働省「毎月勤労統計」
(注)確報ベースで作成しているため、最新値は2015年6月

 これまでも企業はコスト削減を図ってパート労働者を増やしてきた。しかし、足元の労働時間の短時間化については、必ずしも企業の狙い通りではないのではないかと考える。雇用の柔軟化や人件費抑制のために、正社員よりもパート労働者を選好することはあっても、同じパート労働者であれば労働時間が長いパート労働者で労働需要を満たす方が人数が少なくて済む分、管理コストが低下し効率的であると考えられるからだ。

 パート労働者の労働時間の短時間化は、企業がより短時間のパート労働者しか採用できないほど、労働市場が人手不足であることを示している。つまり、労働力全体で見ればまだ供給余力があるものの、一定以上の労働時間働ける労働力に限ればすでに供給は不足しているといえよう。

シニアや主婦の雇用拡大は
ますます労働時間を短縮化させる

 先行き、このパート労働者の労働時間の短縮化に歯止めはかかるのであろうか。

 筆者は平均労働時間の減少は今後も続くと考える。企業の人手不足感はなお非常に強く、今後も雇用者数の拡大が期待される。一方で、すでに足元の失業率は、ほぼ均衡失業率に等しい水準にまで低下しているとみられ、先行きの雇用拡大は非労働力化している人の労働市場参入に頼らざるを得ない。

 となれば、今後の雇用者増は、労働力率にわずかながら上昇余地のあるシニア男性か、現在非労動力化している専業主婦などの有配偶女性に頼ることになる。しかし、両者ともに先行きの平均労働時間を押し下げることになると予想される。

 まず、シニア男性について見てみたい。公的年金の支給開始年齢引き上げなどを背景に、65歳になっても労働市場に残る人が増える中、ボリュームの大きな団塊世代が65歳を迎えたため、ここのところの非正規雇用者の増加には65歳以上男性の影響が強まっていた。彼らの多くは、契約社員や嘱託として働いており、賃金動向などから見る限り、いわゆるパートよりも勤務時間は長い者が多く、短時間労働者の労働時間短縮化にとって歯止めになっていたとみられる。