外国人が安保法案よりも注目するのは
アベノミクスの行方

 円安進行と株価上昇。長年の経済的な停滞感やデフレ経済からの変化はあったものの、安倍政権には脆さも見えており、先行きは明るいとは言い難い。また、中国の株価が下落していることを受け、日経平均株価も下げ基調を続けている。

失望?それとも小泉以来の変革者?安部総理とアベノミクスを、外国人はどう評価しているのだろうか Photo:AP/AFLO

 日本では、スキャンダラスな閣僚の辞任劇や、世論を無視した安全保障関連法の改正案の可決への動きが騒がれる中、海外では、アベノミクスに対して、より冷静な疑問が沸き起こっているようだ。

 外的要因をいったん横に置き、国内要因だけで見た「アベノミクス」はどういった方向性を持つべきなのだろうか。今までの成果を振り返るとともに、今後日本が持続的な経済成長を続けるには何が必要なのか、海外のエコノミストの視点から考察する。

 持続的な円安傾向から転じ、円高に進む動きも見られる為替の不安定さや、中国経済の失速による影響が懸念される一方で、日本経済の内側を見れば短期的には、緩やかに経済が復調していくと見られている。ただ、アベノミクスの成績は現状では是非を問うことが難しいとの見方が強い。

 日本政府主導の量的緩和を主な要因に円安が進行し、株価が大幅に上昇した。日本経済を牽引する輸出企業の利益を押し上げ、資本支出や賃金上昇につながり、消費者物価指数にも好影響を与えるはずだった。だが、蓋を開けてみれば、消費者物価指数は、2013年から14年にかけて1.3%しか上昇しなかった。また、上昇要因も円安による輸入コスト上昇分と分析されている。インフレ率の目標値2%の達成は難しく、1%を少し上回る数値に留まる見込みだ。

 石油価格の下落は輸入企業のコストを押し下げるとも見られている。その浮いたコストを、賃金上昇にまわせれば、賃金上昇による消費者物価指数の上昇や、インフレ、経済成長率の増加につながる可能性もある。

 株価上昇以外では日本経済がもたつく中、日本企業は、成長が著しいアジアへの海外進出を、より一層積極的に進められていくと見られる。アジアのマーケットは、成長が早く、利益率が高い。さらに、マーケットの成長が持続していくと考えられるためだ。