最近、米国景気の本格的な回復に対する期待が、再び高まっている。米国の3月の非農業部門雇用者数は前月対比プラス16万2000人と、2007年3月(23万9000人増)以来の大幅な増加となった。今まで遅れていた労働市場の回復が明確になってきたようだ。
また、米国の代表的な耐久消費財である自動車の販売台数(3月)は、前年対比24.3%増と5ヵ月連続で伸びている。米国の大手小売りチェーンの売り上げも、同3%増と堅調な展開が続いている。それに伴い、足元のアンケート調査の結果をみると。企業の景況感の改善は徐々に鮮明化している。
そうした状況を背景にして、株式市場は上昇傾向が続いており、ニューヨークのダウ平均株価は「心理的な壁」とされる1万1000ドルに近づいている(4月6日現在)。また、原油価格も上昇傾向を辿っており、1バーレル=86ドル台へと跳ね上がっている。
1年ぶりに本格的に盛り上がる
「米国経済回復説」に死角はないか?
こういった状況を見て、経済専門家の一部からは、「米国景気が今度こど本格的に回復を始めた」という指摘が出ている。ただし、米国経済の先行きには、忘れることのできない懸念が残っていることも事実だ。
昨年5月に底を打った住宅価格の戻りは、このところ頭打ち傾向が顕著になっている。また、商業用不動産の価格下落にも歯止めがかからない。こうした状況を冷静に見ると、米国経済はいまだ「バブルの後始末」を完全に終えていないことがわかる。それは、地方の中小金融機関の倒産件数が、今年に入ってすでに40行を越えたことからも明らかだ。
現在、うまく回り始めた米国経済は、株価の上昇や政府などの支援策に支えられている部分が大きい。今後、政府の景気支援の手が離れ、株価上昇が鈍化するようなことがあると、景気の先行きに黄色信号が灯ることも考えられる。
そのリスクを無視することは、適切ではない。米国景気の先行きには、「まだ中長期的に紆余曲折がある」と見たほうがよい。