この問いは、実は中堅社員もベテラン社員も、つねに考え、答えを用意するべき問いだと私は考えています。正解が重要であるというより、これにまともに答えうるのがプロフェッショナルである、という考えからです。

 そこに会社に入りたてのときから、まがりなりにも自分自身で考えさせ、かつまた何人かで対話してもらうのが大事である、と人事担当者とも意見が一致しました。

さて、このあたりで「講師=教える側」であるはずの私は、脳に汗をかくような思いを味わうことになりました。問う者が、いつしか問われる者になるという、プラトンの対話編のような事態になったのです。

  あるグループからは、「仕事って、給料をもらうためにするものだったっけ」という疑問が投げかけられました。

 読者諸賢は、この問いにうま く答えられますか?私は、「給料は、仕事の結果としてもらうもの、考えたほうがいい結果につながるのでは?」と答えました。

 また、ほかのグループは、「成果に対して給料が支払われるというなら、平均の2倍の成果を上げたら、給料は2倍もらえることにならないのか」という疑問も出ました。

  これには企業財務の考え方から、答えは示すことができそうです。しかし、では成果に対する適正な給料はいくらなのか、と問われたとすると、誰も正しい答えは示せないのではないでしょうか。

 新入社員の前で立ち往生することはありませんでしたが、得がたい体験でした。ひとことで言えば、20数年組織の中で働いてきて、考えなくなっていたことや、自動化されていた思考が揺さぶられたわけです。

社会人として働いていく上で重要な
「イニシエーション」と「継続的な意識付け」

 ダイアローグ研修は、最後に「どんな社会人になりたいか/どんな仕事をしていきたいか」というテーマで対話をしました。これは一種の決意表明なの で、前向きな気持ちになって締め、となります。最後に半日の研修を通して得た気づきを1人ずつ発表して終了となりました。

「こういうことで もなければ給料がなぜもらえるかなどということを、あらたまって考えることは無かったかもしれない」、「対話をしてみて、いろいろな考え方があることがわ かった」など、狙い通りの感想が聞かれました。人事の方にも、同じような言葉でご評価をいただきました。