少しアタマを使わないと解が出ないのが「給料はなぜもらえるのか」という問いでしょう。これが今回の肝にあたる部分でした。

「仕 事をするんだから、給料をもらうのは当たり前、と考えてほしくない」という点で、人事サイドと私との意見が一致し、選定したテーマです。

原点は大事だが
経験を積むと価値観は変わりうる

 対話と議論、雑談の違いについて簡単に説明して、最初の「なぜ、この会社を選んだのか」の対話に入りました。そのときに設けたルールは、「司会進行をする人、もしくは口火を切る人は、各グループに任せる」、「全員が必ず意見を述べる」、「ひとりの意見に対しては、必ず2名以上が質問する」という3点でした。対話の時間は30分。発表が20分程度です。

「なぜ、この会社を選んだのか」はアイスブレークにちょうどいいと考えて提示しまし たが、案の定、対話は弾みました。内定期間が最長で1年近くにも及ぶ新人たちですから、振り返って初心を思い出していたようです。

 何人か の発表をふまえて、私が「何に価値を見出すかは、人によって違う。いまそれぞれが話したことが、働く価値観の原点だが、さまざまな仕事経験を積み、多くの 人とコミュニケーションすることで価値観は変わることがありうる」というような短いコメントを述べました。成長するということは、世界が広がることと同義 であり、広い世界につながるべき、というのが言いたかったことです。

 対話をひとつやってみて、少し緊張がほぐれたところで、いよいよ「給料はなぜもらえるのか」を対話してもらいました。

「給料はなぜもらえるのか」というテーマは、あまり親切な問いかけではありません。どのよ うな観点で意見を述べるべきか、解釈の余地が大きいからです。私のほうからは、ざっと利益と給料の関係について話し、そのような観点にとらわれないで話を するように言いました。

 各グループでの対話は、なかなか盛り上がり、多くの傾聴に値する意見がでてきました。

給料は働く目的なのか?

 グループの意見はいくつかに集約され、「同じお金をもらうのでも、アルバイトとは責任が違う」、「お金をもらって研修を受けるのは、会社にとって投資であ り、いつかはリターンを上げなければならない」、「親が学費を出してくれるのも、そこに期待感があるから。会社も似ていて、給料をもらったらそれに答える必要がある」など、さまざまな観点からの興味深い意見がありました。