前回までは、論理思考とは「言葉(境界線)」を明確にしながら「筋道」を構築していく思考であることを確認した。
ここで重要なのは、「論理=筋道」ではないという点である。論理は同時に「言葉」でもあり、どれだけ緻密で壮大な筋道を築き上げようとも、その部品である言葉が曖昧であれば、結局のところ、その思考にはかなりのガタつきが出てくることになる。
マッキンゼー × キリンのプロジェクトで気づいたこと
もちろん、「筋道」をきれいに整理した戦略シナリオをつくれば、社内やクライアントを説得できるかもしれない。
しかし、そこで使われている「言葉」は、本当に十分に検討されているだろうか?
よくありがちなのが「コンサル語」などと呼ばれる外来語である。これがいちばん危ない。
ブランドだとか、ストラテジーだとか、グローバルだとか、アライアンスだとかいった言葉は、本当に明確な境界線として機能しているだろうか?
博報堂に在籍していた1987年、僕はキリンの関連会社をクライアントにしていたこともあり、偶然にもマッキンゼー・アンド・カンパニーとキリンとの共同プロジェクトにメンバーとして参画する機会があった。
当時のキリンは、これ以上の売上を上げると、会社分割の対象になる恐れすらあるほどの独走状態(ビール市場のシェア60%超)で、70年代には5年間まったく広告を出さない時代もあったという。
しかし同年に、アサヒビールが「アサヒスーパードライ」という画期的な商品を投入したことで、キリンにも危機感が生まれた。そこで、新たな戦略の立案をマッキンゼーに依頼したのである。