10月3日、バングラデシュ北西部、首都ダッカから約300キロのロングプール県で日本人が射殺されたというニュースが飛び込んできた。寝耳に水の事件である。
「この親日国で、まさか日本人が殺されるとは」――。バングラデシュ在住の日本人も日本在住のバングラデシュ人も、この悲報に衝撃を受けた。
その後、インターネット上に、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行を認める声明を出したことから、この事件はバングラデシュとISの関連を強く印象づけるものとなった。
日本企業の進出も
増え始めた矢先の惨事
バングラデシュといえばイスラム国家だが、近年は外からの原理主義組織の活動を表面化させない「穏健で安定したイスラム教国」として評価される一面も持っていた。
こうした要素に加え、若年労働者の層の厚さ、比類ない親日ぶりから、近年はチャイナプラスワンの新拠点として、バングラデシュを候補地に入れる日本企業も増え始めていた。
昨年9月には安倍首相が訪問し、今後4~5年で円借款を中心とする6000億円の支援を表明して以降、日バの経済関係には追い風も吹き始めていた。
だが、今回の「ISによる日本人射殺事件」は、こうした評価に修正を与え、外資投資を冷え込ませてしまう可能性がある。
すでに外務省の海外安全情報は、バングラデシュへの渡航について、不要不急のケースはとり止めるよう呼びかける「レベル2」に引き上げた。イスラム過激派組織によるテロの世界各地での発生を受け、「バングラデシュも日本人がテロを含む事件に巻き込まれる危険性がある国」だという認識に切り替わったのだ。
欧米の各国政府もバングラデシュ渡航に対し、危険情報を引き上げている。