『ばけばけ』第58回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」連載です。本日は、第58回(2025年12月17日放送)の「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
珍しい、タイトルバックはじまり
いきなりタイトルバック(ドラマの題名や出演者やスタッフのクレジットなどが掲載されている部分)からはじまった。アヴァン(その前のドラマ部分)なし。
「兄さん寒かろう」
「おまえも寒かろう」
タイトルバック明け。トキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)が怪談「鳥取の布団」を語っている。
鳥取の田舎町に、貧しく幼い兄弟が2人だけで暮らしていた。
寒い冬の日、ぼろ屋には家具も畳もなく、手元にたった1枚の布団。
ふたりがその1枚の布団に身体を寄せ合いくるまっていると、家賃を取り立てに大家がやってくる。
大家は払えないなら貰っていくぞと2人から布団を取り上げたうえ、出てけと吹きすさぶ雪の中に兄弟を追い出した。
そして2人は凍え死んでしまった。
旅人が泊まった宿屋で布団から話し声が聞こえてくるのは、その布団が大家が取り上げた兄弟のものだったからだ。
「兄さん寒かろう」「おまえも寒かろう」。話しているのは兄弟の霊。かわいそうに思った宿屋の主人が寺でお経をあげてもらうと、ようやく布団はしゃべらなくなった。
トキは語り終えると、ろうそくを吹き消す。
「……というお話でございました」
怪談を話し終えるとろうそくを消すのは、『百物語』という怪談の演出にある。100本の怪談を1本1本語り終わるごとにろうそくを消していく。100本目を消すと幽霊が出ると言われていてスリリングだ。
このような趣向は少なくとも江戸時代には庶民の娯楽になっていたようだ。怪談好きなトキだからそういう趣向に憧れもあったかもしれない。
真剣に聞き入っていたヘブン(トミー・バストウ)。日本語はすべてはわからないながら、うっすらわかったようだ。
何度も聞けばわかるようになると思うのか、「もういっぺん」と頼むヘブン。自身の英語のリスニングの授業の逆バージョンのようなものかもしれない。







