◆「マニフェスト」はまだなのか?

 5日に投票が行われた静岡県知事選では民主党系の川勝平太氏が自民・公明両党が推薦する候補を破って勝った。次点との差は大きくなかったが、民主党サイドが候補者調整に失敗したにも関わらず勝った。民主党の好調・自民党の退潮ぶりが一層明確になった。遠からずある総選挙での、政権交代が現実的なものになって来た。

 選挙情勢の分析は筆者の専門外だが、仮に一部報道にあるように東国原宮崎県知事が同県の知事ポストをキャリアの踏み台にして与党側から中央政界進出を目指すような展開になり、漫画好きの首相とお笑い出身の知事が人気取りに注力したとしても、この勢いを止めるのは難しいのではなかろうか。

 政権交代となると、今までに出来なかったことが出来るのではないかという夢が膨らむ一方、民主党に行政を任せて大丈夫なのかという不安も頭をもたげる。こうなると何を置いても気になるのが、民主党のマニフェスト(政権公約)の内容だ。ところが、「早くから敵に手の内を見せるな」ということなのか、現時点で、民主党のマニフェストは発表されていない。

 総選挙が近いこの時期に、マニフェストがまだ発表されていないことは少々不満だが、民主党ばかりでなく、与党側のマニフェストを読む上でも、この時期に確認しておきたいポイントがある。

 それは、個々の政策に関わる「財源」の問題だ。

◆「財源の呪縛」の意図

 日本経団連は、総選挙において与野党がマニフェストに「財政健全化の道筋」、「社会保障制度の充実とそれに伴う税制改革」、「道州制」と「電子行政」の推進などの記載を求めているという。併せて、政策実現に向けた「工程表」と「財源の明記」を要求するという(「朝日新聞」7月5日、朝刊、7面)。

 これらの項目は、日本経団連の然るべきポストの人物か広報担当者が記者に対して述べたものだろうが、財政健全化、税制改革、財源と、日本経団連が求める消費税増税を強く意識したものになっている。

 推察するに、年金等の社会保障のコスト増には消費税を充てる「消費税率引き上げと消費税の福祉目的税化」に具体的な時期を明記しつつ触れて、法人税に関しては引き下げの余地を残す(少なくとも引き上げに触れない)といった内容が経団連的な合格答案なのではないか。