メジャーリーグの伝説的プレイヤー、ヨギ・ベラはよく「またどこかで見た風景だ」と口にしていた。

 20年前、日本の自動車メーカーが高級車市場に進出し、BMW、メルセデスベンツ、アウディといった名門に肩を並べようとしていたとき、懐疑論者たちはその構想に対し、盛んに嘲笑を浴びせたものだった。今彼らは、韓国のヒュンダイモーターカンパニー(現代自動車)に対して同じことをやりつつある。

現代自動車は本国の韓国では2009年3月に新型「エクウス(Equus)」を披露した。
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 確かに、韓国車と聞いて最初に脳裏に浮かぶのは「高級車」というイメージではない。韓国車と言えば低価格で親しみやすい小型セダンやクーペであり、何よりもまず価格優先で販売されるものである。だがこのところ、特にヒュンダイは着実に高級志向を強めており、2009年1月に北米のカー・オブ・ザ・イヤーに輝いたセダン「ジェネシス」など、予想外のヒットを生み出している。

 さて、本当の挑戦はここからだ。中国に全体の市場規模で抜かれたとはいえ、いまだ世界最大の高級車市場である米国で、ドイツ(そしてもちろん日本)の自動車メーカーの最高級車、たとえばBMWの7シリーズ、メルセデスのSクラス、そしてトヨタ自動車のレクサスLSといった製品の後を追えるのかどうか。

 ヒュンダイが選んだ武器はセダン「エクウス(Equus)」である。最近まで「VI」という開発コードネームで呼ばれていた車種で、4月のニューヨーク国際自動車ショーで北米仕様が初出展された。

 以前の「ジェネシス」同様、この新たな高級セダンは馴染み深い外観を持っている。批判的に見れば「派生商品」という言い方もできるだろう。ヒュンダイ幹部は、新たなデザイン言語「Fluidic Sculpture(流体彫刻)」の一例だと主張するが、その全体的な見た目は、既存の最高級車種から明らかに強い影響を受けている。このセグメントの車種を購入する富裕層の、全般的に保守的な性向を反映したデザインだ。

 予想どおり、新車種には高級車ならではの仕様が盛り込まれている。4.6リッターV8という大排気量エンジンは「ジェネシス」と共通だが、パワーは365馬力に強化されている。オーディオは17スピーカー、合計608ワットの出力だ。4人乗りバージョンを選べば、後席は自家用ジェット機のようにリクライニングし、折りたたみ式のフットレストも完備している。もちろん、目につくところには革とウッドがふんだんにあしらわれている。