極論すれば、19世紀においてリヒャルト・ワグナーが歌劇「ニーベルングの指環」で音楽を新しい段階に押し上げた如く、ジョンは「スター・ウォーズ」で20世紀の映画音楽に新しい息吹を吹き込んだ、とも言えます。「ニーベルングの指環」も「スター・ウォーズ」も荒唐無稽な設定のエンターテイメント大作です。個別の登場人物のために音楽を書き分けるライトモーティーフという個性が強調されます。同時に、現実に生きる人間の本質をも抉り出し、音楽と相まって感動が倍加します。

 音楽の評価は常に世代・時代とともに変わり得ます。後世の音楽ファンがジョンの音楽をいかに評するのか、興味は尽きませんが、今や、映画音楽をクラシック音楽の一分野と認識させるようになった一翼をジョンが担ったことは確かです。

 と言うわけで、今月の音盤セレクトはジョン・ウィリアムズです。ジョンは「スター・ウォーズ」で一気に名をあげましたが、実のところ、彼には3つの顔があります。

米空軍で軍楽隊に所属、
除隊後はジャズピアニストに

 ジョンは幼き頃から音楽の中で育ちます。少年時代、地元の教会で4年間にわたりオルガン奏者を務める音楽的早熟でした。その後、プロフェッショナルな音楽家として登場するのは、ジョンが22歳の時。ジャズピアニストとしてです。

 1954年から55年のニューヨーク、弱冠22~23歳の頃のジョンの雄姿を今に伝える2つの音盤があります。しっかりとした基礎を持ち将来を嘱望される若きピアニストの姿が刻まれています。

 1つは、スタン・ゲッツ五重奏団のピアニストとしての録音です(写真)。トニー・フルセッラ&ブリュー・ムーア名義の「1954未発表アトランティック・セッション」に収録されています。全体を俯瞰した上で、フロントの管楽器を支える若きジョンが眩いばかりです。