ハーバードビジネススクールのアジアパシフィックリサーチセンターの主任教授を務め、アジア地域の政治・経済を専門に研究しているフォレスト・ラインハート教授。「日本は世界の未来を象徴している」「日本がアジアの中で、世界の中で重要な役割を果たしていくのは間違いない」と断言する。その真意とは? ラインハート教授がマクロな視点で解説する。(聞き手/佐藤智恵 インタビューは2015年6月22日)

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専門家が認める日本の強み
「社会制度の透明性が非常に高い」

日本人には見えない「日本の強み」って何ですか? フォレスト・ラインハート
Forest Reinhardt
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営管理。同校のアジアパシフィックリサーチセンター主任教授。MBAプログラムでは選択科目「エネルギー」、エ グゼクティブプログラムでは必修科目「グローバルマーケット」(ビジネスの観点から世界の政治・経済を学ぶ授業)を教えている。トヨタ自動車、日産自動車 等、日本企業についてのケース教材を執筆。主な著書に“Down to Earth: Applying Business Principles to Environmental Management.”(Harvard Business School Press, 1999)。

佐藤 ラインハート教授は、社会インフラや社会制度の専門家でもありますが、今、研究しているのはどのような分野ですか。

ラインハート 過去35年間で、社会制度の構造が企業行動や経済成長にどのような影響をもたらしてきたかを研究しています。政府だけではなく、国際機構等についても調査していて、いずれ本にまとめようと思っています。過去の分析をもとに、今後10年から20年で世界の政治・経済システムがどのように進化していくか、予測したいと考えています。

佐藤 世界各国の社会制度を研究されているラインハート教授の目からごらんになって、日本の強みはどのような点だと思いますか。

ラインハート 日本の強みといえば、何と言っても日本企業ですね。世界的な企業が数多くあり、競争力もある。日本経済だけではなく世界経済にも大きな影響を与えています。

 日本人の分析的な特性、几帳面な特性も強みだと思います。アメリカには「最初から完璧にやる時間はないけれど、もう1回やり直す時間はいくらでもある」というジョークがあるぐらい、几帳面な人は少ないのですが、日本には真面目で勤勉な人が多いですね。もし日本人がアメリカ人にこんなジョークで言い訳されたら、「それなら最初からきっちりやればいいのに」と思うことでしょう。

 社会制度や公共機関等、社会インフラも日本の強みであると思います。こうした社会基盤がなければ、日本はこれほど急速に経済成長を遂げられなかったでしょう。日本のインフラといえば、信じられないほど先進的な交通システムや通信システムが思い浮かびますが、特に経済成長に大きく貢献しているのは、日本の経済システムです。全体的に見て、日本の社会制度は健全に機能していて、非常に透明性が高いと思います。