「2020年までに指導的地位にいる人の3割を女性に」
「2015年度の国家公務員採用、全体、総合職ともに女性の割合を30%以上に引き上げ」

安倍政権は「女性の活躍推進」を成長戦略の1つとして掲げているが、その数値目標はいつも30%以上。なぜ3割をめざさなくてはならないのか。その根拠となった1つが、1977年、ロザベス・モス・カンター教授が発表した論文だ。

世界的なリーダーシップ論の大家として、ダイバーシティー、企業変革、イノベーション等、幅広いテーマで多くの著作を記してきた教授が、今年5月、アメリカのインフラストラクチャーをテーマにした書籍を出版。なぜ今、アメリカのインフラに警鐘を鳴らす書籍を執筆したのか。その真意を探る。(聞き手/佐藤智恵 インタビューは2015年6月23日)

>>(1)ら読む

インフラの再生は
未来の都市、貧しい人々のために必要

ロザベス・モス・カンター
Rosabeth Moss Kanter
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営管理。特に経営戦略、イノベーション、変革リーダーシップを専門に研究。ハーバード大学アドバンスド・リーダーシップ・イニシアティブプログラム教授兼ディレクター。2013年、Thinkers50「世界で最も影響力のあるビジネス思想家50人」の1人に選出。ハーバード・ビジネス・レビュー誌の元編集長でもある。著書・共著書は合わせて19作。最新作は“MOVE: Putting America's Infrastructure Back in the Lead” (W.W. Norton & Company, 2015)。

佐藤 カンター教授はアメリカのインフラに警鐘を鳴らす本を出版されましたが、そもそもなぜインフラを再生することが大切だとお考えなのですか。

カンター インフラは、私たちのクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を高めるのに欠かせない要素であり、国の経済成長を左右するものだからです。アメリカでは「インフラ産業への投資は雇用を増やし、経済全体を成長させる」と雇用の面ばかりを強調している人もいますが、それは本質ではありません。

 何のために国全体のインフラを再生させるのでしょうか。未来の都市をつくるためです。人々がより活動的になるような街をつくるためです。貧しい人々の家計を助けるためです。職のない人が就職しやすい環境をつくるためです。家計に占める交通費の割合というのは、意外に大きいものです。インフラを改善すれば、より安く、効率的に移動できるようになるでしょう。

 私は何も自動車はもう要らないと言っているわけではありません。1本の道を自動車、自転車、バス、路面電車、歩行者でうまく分け合いませんか、と提案しているのです。道路をもっと効率的に安全に活用する方法があると考えています。

なぜ日本はインフラ先進国なのか

佐藤 日本はインフラ先進国だと言われています。電車は遅れませんし、宅配便も時間指定で配達してくれます。なぜこのような国をつくることができたのでしょうか。