ハーバードで日本の自動車メーカーの事例を教えているフォレスト・ラインハート教授。「なぜ日本の自動車メーカーは強いのか」と率直に聞いたところ、意外な答えが返ってきた。強さの秘訣は、自動車メーカー社員に共通する“ある特性”だという。それは一体何なのか。ラインハート教授独自の分析をうかがった。(聞き手/佐藤智恵 インタビューは2015年6月22日)

アジアを理解するには
まずは日本を理解しなければならない

フォレスト・ラインハート
Forest Reinhardt
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営管理。同校のアジアパシフィックリサーチセンター主任教授。MBAプログラムでは選択科目「エネルギー」、エグゼクティブプログラムでは必修科目「グローバルマーケット」(ビジネスの観点から世界の政治・経済を学ぶ授業)を教えている。トヨタ自動車、日産自動車等、日本企業についてのケース教材を執筆。主な著書に“Down to Earth: Applying Business Principles to Environmental Management.”(Harvard Business School Press, 1999)。

佐藤 ラインハート教授はハーバードビジネススクールのアジアパシフィックリサーチセンター主任教授を務められていて、アジアの政治・経済の専門に研究されています。日本の企業事例もいくつか執筆されていますが、そもそも日本に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

ラインハート 生まれて初めて訪れた外国が日本だったことです。私自身はアメリカ・モンタナ州出身なのですが、母は韓国出身です。9歳のときに初めて母の実家のあるソウルを訪れたのですが、その途中で日本に数日間滞在することになったのです。時は東京オリンピック後の1968年。日本は高度経済成長のまっただ中でした。

佐藤 そのときは、何が印象に残りましたか。

ラインハート 子どもながらに、構築環境(自然と建築物と人間との関わりによって生まれる生活環境) が美しいと思いました。自然の中に温泉施設があったりして、自然と人間が共生している環境が新鮮に映りました。アメリカにも美しい町はあるのですが、日本のように自然と社会が調和している町を見たのは初めてだったからです。

佐藤 日本について研究しようと思ったのはなぜですか。

ラインハート 1990年代にアジア経済の研究をはじめてから、日本についての研究をはじめました。アジアを理解するにはまず日本を理解しなければならないことに気づいたからです。