そこで市は通知カードを保管している旨を記した封書を近く発送し、役所まで取りに来てもらうか、要望があれば書留で再送する方針だ。普通郵便で封書を送れば転送先住所に行き着くので、住人の所在を〝追跡〟できる。

 それでも連絡が取れなかった場合、通知カードを送り届ける作業は困難を極める。役所での保管期限は最短3ヵ月間。多くの自治体では専従の職員チームを編成し、所在不明者の行方を追うべく臨戦態勢を取る。

 そんな中で聞こえてくるのは、国への恨み節だ。自治体職員は、総務省の事務処理要領を参照しマイナンバー制度への対応を行うが、この要領の最終版が確定したのは法施行直前の9月末だった。職員は「想定外の事態を考える余裕もなく、要領を読み込みながら実務を同時に進めている」(神奈川県のある自治体職員)というドタバタぶりだ。

11月中配達は絶望的?
当初予定の延期で現場から悲鳴

 しかし「想定外」の事態は早くも起こっている。

 千葉県内の介護付き有料老人ホームでは、住民票を自宅から施設に移した入居者の通知カードが届き始めた。しかし施設入居者の中には判断能力が低下し、マイナンバーを自ら管理できない高齢者も多い。実は、介護施設が入居者のマイナンバーをどう取り扱うかいまだにルールが定まっていない。留意点をまとめた事務連絡は、厚生労働省が10月中をめどに通知する予定だったが、「関係各所の調整に時間がかかっている」(厚労省保険計画課)として遅れているのだ。

 施設職員は「ルールがはっきりしないので勝手に家族に渡すわけにもいかない。結局、開封しないまま金庫に保管している」。国の方針決定の遅れで現場に混乱が生じているのだ。

 通知カードは、地方公共団体が共同運営する「地方公共団体情報システム機構」(J‐LIS)が作成し、全国各地の郵便局へ発送する手順になっている。しかし全国の郵便局が引き受ける予定の5600万通のうち、11月11日時点で実際に届いたのは4割程度に過ぎない。

 1億2000万枚という全国民の通知カードを一度に印刷するには、業務を担う国立印刷局の既存施設ではキャパシティに限界があり、印刷や封入が終わっていない通知カードが大量にあるためだ。

 国は11月中に全世帯への初回配達を終える目標だが、仮に郵便局に通知カードが届いたとしても、そこから局内での仕分けや確認作業を経て実際に配達を完了させるには、引き受けから7~20日間を要する。横浜市や大阪市など大都市の郵便局に通知カードが届くのは11月中旬以降とみられ、「11月中」という政府の目標達成はほぼ絶望的な状況なのだ。