「テーマが引きこもりというと、重くなりかちになるのかなと思っていたけど、全体として明るい雰囲気で過ごせたので良かった。講師の元当事者たちのお話は、みなさんユーモアがあって話術も巧みで、初めてでも安心して聞けたんです。スタッフも含めて明るくて前向きな感じで、自分が励まされたというか、元気がもらえた感じを受けました」

参加者に属性を尋ねたパネル。最終的に「当事者」と申告のあった参加者は50名を超えた

 以前、当連載で紹介した「おがたけさん」は、名札に「セクシュアリティ」と書いて掲げていたら、参加した当事者が名札を見て反応してくれた。個別に話してみると、「セクシュアリティ」という言葉に反応したものの、これまで「ひきこもり」という名のつく場に行っても話すことができなかったという。おがたけさんは、そこでしかない出会いだったので、まったりと過ごそうとしていた予定を変え、一緒に庵形式のテーマ別の対話の場に移動。急きょ、おがたけさんがファシリテーターとして仕切った。沖縄の宮古島から来た「さとさん」、以前、当連載で取り上げた「M君」、庵のディレクターである「しんごにぃにぃ」こと川初真吾さんらとの対話も弾み、そこでしかない出会いがさらに膨らんだ。

 さとさんは、引きこもっていた10年近く前からネット上でつながり支えてくれた仲間たちと、この場で初めて出会うことができた。

「まさかリアルで会えるとは思っていませんでした。優しい方たちで話しやすかった。離島では当事者とは交流がないので(引きこもりはいると思いますが)、新鮮でした。とくに、インターネットで交流がある“おがたけさん”と会えたのはとても嬉しかったです。また会って話したいです」

 ネットでつながっていた人たちが、リアルに対面するオフ会のような場にもなった。

 忘れていけないのは、おそるおそる勇気を出して来てくれた人たちの背後には、たくさんの姿の見えない人たちがいるということである。でも、こうして目の前で起きているのは、つながれる人たちからまず社会とつながっていき、声をかけあったりしながら元気になっていく人たちの“変化”だった。

 そして、いまも声を出せずに、また来ることのできない人たちの気持ちを理解できる経験者の中から、そんな彼らと社会をつなぐ人たちが現れた。そんな多くの当事者たちが求めているのは、「引きこもり」という閉ざされた領域の上下の関係性ではなく、実は、社会にいる人たちとのフラットなつながりなのではないか。大事なのは、そうした多様な人たちとの出会いをつなげてくれる人たちの存在や、自らの意思で動き始めた経験者たちよる安心できる出会いの場づくりであることに、そろそろ社会は気づくべきときにきている。

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