佐藤 日本の民主主義が正常に機能しているのか、中からはよく分かりません。国会では憲法改正、選挙改革、TPP等、多くのことが議論されています。本当に国民の声が反映されているのか、今ひとつ実感できないのです。

モス 私がアメリカの民主主義を研究していて分かったことを1つお伝えしましょう。いつの時代のアメリカ人も「アメリカの民主主義は崩壊しつつある」と考えていることです。「私たちの民主主義はうまく機能していない。昔はとても民主的だったのに、今はそうでもない」と誰もが感じています。

 ところが民主主義というのは国民が認識しているよりもずっと深いところで機能しているものなのです。「民主主義が崩壊しつつある」と主張する批評家がいたとしても、後から振り返ってみれば、「あのとき、この国の民主主義は非常にうまく機能していたな」となるのです。おそらく同じことが今の日本についても言えるのではないかと思います。

 日本は過去20~30年間、大変苦しい時代を経験しました。しかし、将来、国民はこんな風にこの時代を振り返ることになるかもしれません。

「思っていたよりも日本社会は強かったんだな。時間はかかったけれども重要な改革は進んでいたのか。結果的にこの苦しい時代は、日本が良い方向に変わり始める転換点になったんだ」と。

日本人が思っているよりも
はるかに日本経済は強い

「トップのための経営戦略講座」(野村マネジメント・スクール)で教鞭をとるデビッド・モス教授
(c)野村マネジメント・スクール

佐藤 日本人は内向き志向で多くのビジネスチャンスを逃している、と言われていますが、今後、日本は世界にどのような貢献ができるでしょうか。

モス まずは日本経済を回復させることでしょう。力強い日本経済を取り戻すことが、最も大きな貢献になると思います。

 私は固定観念を持つのは好きではありませんし、「日本は内向き志向だ」と決まり文句でくくってしまうのもどうかと思います。もちろん「ガラパゴス化」という言葉はよく聞きますし、そうならないために何らかの対策は必要だ、とは思います。

 日本を訪問するたびに、いつも素晴らしい製品に出合いますが、その製品の多くが海外では販売されていません。もっと多くの先進的な製品を、世界の人々に届けてほしいと思います。そうすれば世界に貢献できるだけではなく、日本にとってもプラスになります。