「予期せぬことの生起」について考えるうちに、夢たちは、マネージャーだけ五人も集まったのは、すでにドラッカーがいうところの「予期せぬ成功」であり、「イノベーションの機会」だということを知りました。
そこで、なぜそれが起きたのかを分析するため、マネージャー一人ひとりに野球部に入った理由を聞いていきます。
するとそこで、夢は思わずこう答えました。
「私は、居場所がほしかったから、マネージャーになったの」。
そうして「居場所」が、やがて夢たちマネージャーにとって一つのキーワードとなっていくのです。
「私たちの野球部は、野球をするための組織ではない
──ということです」
「なるほど、面白い──」。しばらくの沈黙の後、そう口を開いたのは真実だった。「たった五人でも、実にいろいろな意見が出てくるものね。でも、これでよく分かった。今のみんなが、何を望んでいるか。何を求めているか」
「『みんな、そんなふうに考えてるんだ』って感心した──」と、今度は五月が言った。「でも、みんなの意見も、ちょっとずつ私の中にあるよ。私も、マネジメントの勉強はしたいし、人の役にも立ちたい。新しいことにも興味があるし、居場所だってもちろんほしい。そっか、居場所か。私もそれで、昔は苦労したからな」
「そうなの?」
と尋ねた洋子に、五月は溜め息をつきながら言った。
「あなたは苦労してなさそう」
「確かに!」と他ならぬ洋子が言ったので、教室にはみんなの笑い声が響いた。
それで、この日の会議は終了となった。次回は、この日出た意見をもとに『予期せぬ成功』を活かしたイノベーションについて考える──ということになった。