だから、企業の人材戦略には、自分たちの会社の文化、価値観が何かをきちんと見極め、その価値観と従業員を「エンゲージメント」することが大事となる。もちろん、その価値観が世間や時代とズレていては優秀な人材は獲得できないし、採用できたとしてもすぐに辞めてしまう。実はこの「価値観のズレ」こそが、若きハイスペック人材の離職問題の根源にあるのではないか――。

 もちろん、大企業をドロップアウトした人材がベンチャー企業に転職して人材流動化が起き、新しい産業が生まれるというプラスの面もあるだろう。しかし、ベンチャーばかりが受け皿でいいはずもないし、ベンチャーができることにも限りがある。「一億総活躍社会」を標榜するなら、大企業もベンチャーもNPOなどの社会セクターも、あらゆるタイプの組織において「多様性」を受け入れつつ、個々の優秀な人材を生かせる「独自の文化」を作ることだ。若くて意欲的で優秀な人材が会社に不満を持って辞めていくのは単なる甘えだ、と切り捨ててしまうだけでは、そこに企業としての成長はないし、上司としての責任も果たせない。

 もし、あなたの部下のハイスペック人材が「会社を辞めたい」と言ってきたとしたら、どうだろう。それは、その若者の考えが本当に甘いだけなのか。もしかすると、自分自身や会社の価値観が、世間や時代とズレて古くなってはいないか――。少なくとも「そうかもしれない」と自分自身を一度は疑ってかかることも、とくに中年以降のオヤジ・ビジネスパーソンには必要ではないか、と僕は思う。それが会社のためになり、自分のためにもなるのだから。