未だ実在する「どんぶり勘定」

 言うまでもなく、現地での原価計算の仕組みが整い、そこで計算された結果を把握することで、初めて、どの製品の採算がとれているか、採算がとれていない原因は何かを分析し始めることができます。そして、その原因が、製造工程の生産性にあるのか、生産数量の規模や稼働率の問題なのか、労働コストなど金額の問題なのか、それを明らかにすることで現状を把握し、対応策が検討できるようになるのです。

 私が以前、コンサルタントとして会計を見ていたある企業では、本社では詳細な原価計算ができていました。ところが、海外の製造現場では、製品の実在庫と帳簿在庫が合わない、製品別に使用している部品の原価が正しく把握できていない、などという状況が生じており、本社がこの事実を把握した時には、短期間で立て直すことができる状態ではなくなっていた、という悲惨な状況に陥りました。

 後に、本社の財務・経理担当役員に聞いたところによると、海外の現場からの「できています」「心配ありません」という報告を信じ、海外現場にまかせきりにして、海外での製造プロセスや原価計算の確立に対する本社財務・経理部門の関与が希薄だったことが原因でした。

 同じ会社の仲間を信じて任せる、という性善説が悪だとは言いません。それでも、企業の会計という部門において、状況把握、確認、そして検証は不可欠です。そして、それが手遅れになる前に定期的に行われていなければなりません。

 そうした適切な会計の「感覚」は、企業が正しく自社の力を把握し、そこから新たな戦略を描く上で必須のことです。これは海外製造現場においても、本社においても、同じレベルの感覚を持つことが重要です。