ここ最近、買収や大型提携を次々と行ってきた日本生命保険が、またぞろ動いた。保険ショップ最大手ほけんの窓口傘下であり、訪問販売型乗り合い代理店の最大手ライフプラザパートナーズの株式を取得し、筆頭株主に躍り出るというのだ。その背景には何があったのか。詳細レポートをお届けする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)
生命保険業界のガリバー、日本生命保険の“爆買い”が止まらない──。
11月27日、生保業界がどよめく事態が起こった。日生が保険ショップ最大手ほけんの窓口グループ傘下のライフプラザパートナーズ(LPP)の株式68.6%を約3.8億円で取得し、筆頭株主に躍り出たと発表したからだ。
LPPといえば、約800人の営業社員を抱える訪問販売型乗り合い代理店の最大手。委託型募集人が保険業法で禁じられている「再委託」に該当するとされ、適正化が図られたことで営業社員数は約1600人から半減したものの、販売力は依然として大きい。
事実、日生の代理店として長らくトップの座に君臨していたスターツコーポレーションを昨年抜き去り、「LPPが1位の座に就いた」(窓口幹部)というほどだ。
だが、約5万人の営業職員を抱える日生にとって、同じ訪問販売型のLPPを傘下に加えることは、自社の営業職員とバッティングする可能性があるため、そう簡単な決断ではなかったはずだ。
とはいえ、複数の商品を比較した上で保険に加入したい消費者が増えており、乗り合い代理店は伸長し続けている。とりわけ日生をはじめ大手生保が苦手とする若年層に強いことから、「とにかく顧客接点を増やしたい」(関係者)と考える日生が買収に動いた。
一方の窓口にしても、営業収益約376億円(2015年6月期)のうち約3割を占めるLPPが抜けるが、窓口の窪田泰彦社長からすれば今回の案件は、「事業の再構築」との意味合いが強い。
というのも、窪田社長は、顧客保護を命題に掲げた改正保険業法が来年5月末から施行されるのを見据え、前社長時代の売り上げ至上主義から脱却する「最優の会社」づくりに着手している。
そこで、無理なく働けるように給料制度の改定などを行っているが、固定給プラス歩合の報酬体系であるショップ事業についてはコントロールが利きやすいものの、LPPについては限界があった。
なぜなら、LPPは業績連動型の報酬体系のため、売り上げ至上主義から抜け出すことが難しく、また、手数料収入の大半を報酬として支払うため、高コスト体質から抜け出せていないからだ。
そういった理由から、LPPの切り離しを模索していた窪田社長と、5月に中堅保険ショップ、ライフサロンを買収、成長分野である乗り合い代理店業界への進出にかじを切った日生との思惑が絡み合ったのが、「半年ほど前あたり」(窓口幹部)だったという。
ここで割を食うかたちとなったのが、住友生命保険だ。