ところがロシアが9月30日からシリアのIS、ヌスラ戦線など反政府勢力への攻撃を始め、9月27日からフランスもシリア領内のIS攻撃に参加し、11月13日のパリでのテロ事件後、攻撃を強化する情勢となっては、米国も何かはっきりした戦果をあげないと指導力が低下するし、国内でもオバマ政権批判が高まる。

 1年以上航空攻撃を続けてもISは弱らず、一部では支配地を拡大さえしている。米国が支援した「自由シリア軍」は消滅に近い状態だ。その代わりに「新シリア軍」を作ろうとし、5400人を2016年5月までに募集する計画だったが、応募者は200人に満たず、トルコで訓練した54人を7月にシリアに戻したが9月には4、5人しか残っておらず、第2陣の70人を9月に帰国させるとすぐヌスラ戦線に降伏、兵器、車輛を引き渡すありさまで、米国はその計画をあきらめた。

 こんな失敗続きではシリア内戦の停戦を目指す関係国会合でも米国の発言権は弱くなるから、米国としてはもはやトルコ人の感情などに構っておれない。そこであえてタンクローリー攻撃に踏み切ったのだろう。

米国のロシア批判は
「アルカイダを攻撃するな」も同然

 11月24日にはトルコ空軍のF16戦闘機がシリア北西端のラタキア付近でロシアの戦闘爆撃機Su24を撃墜し、救出ヘリコプターの乗員を含め2人が死亡した。シリアとトルコの国境が入り組んだ地域で対地攻撃を続けていれば、ロシア機がトルコ領空をかすめることはありそうだが、10数秒領空を通り抜けた外国機を撃墜するのも乱暴な話だ。

 この背景にはロシア機の対地攻撃がISだけでなく、ヌスラ戦線やそれと共闘する反政府勢力に向けられていることがある。その航空支援下でシリア政府軍がヌスラ戦線が占拠しているイドリブの町を奪回しようとしているから、反政府勢力を支援するトルコはシリア領内で多数のトラックをロシア機に破壊されて焦立ちを強めていたこともあるだろう。

 米国は「ロシアがISだけでなく、その他の反体制勢力も攻撃している」と非難するが、「IS以外の反体制勢力」とはアルカイダに属するヌスラ戦線を中心にそれに同調する他の27もの雑多なイスラム武装集団が加わった「ファトフ軍」が主で、米国が言う「穏健な反政府勢力」とは具体的にどの集団を指すのか定かではない。米国の非難は「アルカイダをロシアが攻撃するのはけしからん」と言うのと同然だ。

 内乱に際して、他国が政府側を支援し、治安の回復、国の統合の維持を助けるのは適法だが、反徒に武器や資金を提供したり、訓練を施すのは「間接侵略」に当たる。これはもし日本で騒乱が起き、他国が暴徒に武器などを提供することを想像すればすぐ分かることだ。ロシアがシリア政府を支援してISとヌスラ戦線などを区別せず、反政府軍を攻撃するのは非難しえない。

 ロシアはトルコが自国機を撃墜したことを「テロリストの共犯に背後から撃たれた」と非難し、トルコがISの石油密売の相手方であることを強調し、トルコはそれを否定している。トルコ政府自身がそれをしているとは思えないが、米財務省のISの資金源に関する調査報告などから見て、密輸を十分に取締っていないことはありそうに思える。