「クリミア併合」で「世界の孤児」になったはずのプーチンが復活している。一方、AIIB事件以来、米国と対立を深めてきた習近平の訪米は大失敗。今回は、米中を軸に大きく動き始めた国際政治を解説する。

ローマ法王とインド首相に“完敗”
米国に冷たくあしらわれた習近平

 9月28日からニューヨークで開催された国連総会。オバマ大統領はもちろん、安倍総理や習近平、プーチン大統領など、世界の有力トップが集結し、首脳会談も行われた。世界の首脳たちの言動から、現在の国際政治の流れを読み解くことができる。

 まずは中国。習近平の訪米は、「失敗だった」といえる。米国メディアは、同時期に訪米したフランシスコ・ローマ法王をトップで報道し、習近平は「主役」になれなかった。ホワイトハウス前では、「習訪米反対」の大規模デモが行われ、チベット人などが、中国の「人権問題」を訴えた。(太線筆者、以下同じ)

<一方、目立ったのは、米国内の習氏への冷ややかな反応だ。
 米テレビは、22日から米国を訪問しているローマ法王フランシスコの話題で持ちきりとなっており、習氏のニュースはかすんでいる。
 中国事情に詳しい評論家の宮崎正弘氏は「習氏にとって一番の期待外れは、全く歓迎されなかったことだろう」といい、続けた。
 「ローマ法王はもちろん、米国を訪問中のインドのモディ首相に対する熱烈歓迎はすごい。習主席は23日にIT企業と会談したが、モディ首相もシリコンバレーを訪れ、7万人規模の集会を行う。米国に冷たくあしらわれた習氏の失望感は強いだろう。中国の国際社会での四面楚歌(そか)ぶりが顕著になった」>(夕刊フジ 9月28日)

 オバマ・習首脳会談の成果は、「サイバー攻撃をやめること」「米中軍の間で不測の事態が起こるのを回避するために対話窓口をつくること」だという。

<今回の合意では、海軍艦船の艦長らに対し、迅速な意思疎通を図りその意図を明確にすることを求めたほか、国家安全保障上の対立に発展しかねない衝突を回避するため、安全な距離を保ち「無礼な言葉づかい」や「非友好的なそぶり」を避けることも定めている。>(CNN.co.jp 9月26日)

 この合意は、両国関係がいかに悪化しているかを示している。つまり、「合意がなければ、軍の『無礼な言葉づかい』『非友好的なそぶり』が原因で、『武力衝突』が起こる可能性がある」のだ。

 同じく米国と仲が悪いはずのロシアはどうだろう?プーチンは9月28日、国連総会で演説。「対イスラム国」で、「国際法に基づいた、本物の幅広い反テロ連合を形成する必要がある!」と熱弁した。

 同日、プーチンは「対ロシア制裁」を主導するオバマ大統領と首脳会談を行った。(安倍総理とも会談した)。約90分続いた会談のテーマは、「シリア、イスラム国問題」と「ウクライナ問題」。「シリア、イスラム国問題」で、米ロの溝は埋まらなかった。プーチンは、シリアのアサド政権を強化することでイスラム国と戦いたい。しかし、オバマは、アサドを政権から追放したいのだ。

 とはいえ、2人の大統領が「会って90分話した」という事実だけでも、米ロ関係は改善していることがわかる。一体、何が米ロ関係を変えたのだろうか?