なぜ企業の不祥事は起きるのか
小宮コンサルタンツ代表
2015年は免震ゴムの不正の東洋ゴム工業、不正会計の東芝、施工不良の旭化成建材というように大企業の不祥事が目立った年でした。これらの不祥事は現場の担当者レベルで起こせるものではなく、組織ぐるみの「犯行」と言っていいでしょう。
ではこれらの会社は「悪い会社」なのでしょうか。私が尊敬する経営コンサルタントの一倉定さんは「会社には良い会社、悪い会社はない。あるのは良い社長と悪い社長である」と話しています。不祥事を起こした会社は、会社自体が悪いのではなく、会社を率いる経営者が悪いのです。
東芝の経営者は「3日で120億円の利益を出せ」と部下に指示しました。良い社長であれば、無茶な指示を出せば不正行為を誘発することぐらい想像できるはずです。
なぜ企業の不祥事が起こるのか。経営者に「目的」と「目標」の区別がついていないからです。「目的」とは存在意義であり、「目標」は目的達成度合いの評価や目的達成の手段です。
会社が存在する「目的」は二つあります。ピーター・ドラッカーの言葉を借りるまでもなく、一つは「良い商品やサービス、独自の商品やサービスをお客さまに提供して喜んでいただき社会に貢献すること」と、もう一つは「働く人を活かし幸せにすること」です。
売上や利益の数字は「目標」です。良い商品やサービスを提供し、働く人が活き活きと働いていれば、おのずと売上や利益がついてきます。ですから目的達成を目指した結果が売上や利益なのです。だから目標です。経営者がその基本的なことを理解していれば、3日で120億円の利益という目標設定をするわけがありません。
時間はかかるかもしれないが、もっと良い商品、他社がまねをできないような商品を提供して売上を伸ばそうと考えるはずです。こんな基本的な話をすること自体恥ずかしいのですが、それができない「最低レベル」の劣悪な経営者が増えていることはとても嘆かわしいことです。