セグメントごとに読み方を変える

 読書は楽しいことが第一です。イヤイヤ読んでも頭には残りません。でも、全体としての読書効率を上げるためには、「効率の良い読み方」もトライしてみましょう。『戦略読書』の第2章では、読書ポートフォリオのセグメントごとの、効率の良い読み方を考えます。

 基本は「ビジネス系は必要なところだけピックアップ」「非ビジネス系はじっくり味わう」なのですが、そうするための前提も考えると、次のような感じの読み方がいいでしょう。

ビジネス基礎
少数の古典をじっくり読む。応用読書の基礎をつくる

ビジネス応用
成功・失敗事例やファクトのみをピックアップし、新しいコンセプトやフレームワークの学習は最小限にとどめる。どうせ使いこなせないから

非ビジネス基礎
ヒトやコトの本質に迫る本を選んでじっくり読む

非ビジネス新奇
売れたものや信頼する人のオススメ本を斜め読み

 ビジネス系は、基礎ができていれば応用はつまみ読みで大丈夫です。もともとがロジカルな世界なので。経営事業戦略・財務会計・マーケティング・生産・物流・人事組織・商品開発・IT・オペレーション・ロジスティクスなどの基礎をまず理解しましょう。あとはその上に立つピラミッドに過ぎません。ただその基礎を築くために、各分野の基礎本を1冊でいいので熟読玩味しましょう。線を引いて、メモして、SNSやブログに書いて、もう1回読んで。

 その「基礎」さえあれば、応用セグメントではそこから何が違うのか、新しいのかだけを、気にすればいいことになります。

 非ビジネス系は、とにかく幅が広く「すぐに何かの役に立つわけではない」本だらけですが、だからこそ本質にこだわります。ヒトやコトの本質を描いた(といわれる)名作を選び、じっくり味わいましょう。そして良いと思ったなら、その本質をちゃんと抽象化して記憶しておきましょう。

『幼年期の終り』アーサー・C・クラーク(ハヤカワ文庫)1979年

 アーサー・C・クラークのSF『幼年期の終り』で語られるのは、新人類の誕生と旧人類(われわれ)の救助です。でもそこでの本質は「進化とは断絶である」ということなのでしょう。

 われわれから生まれ出た新人類は、圧倒的な能力とコミュニケーション力を持ちます。それはままごと遊びで地球を破壊できるほどの力なのです。そんな者たちを相手に、どんなコミュニケーションが成り立つでしょうか。われわれは親ですが、子どもたちを理解すらできないことになるのでしょう。

 そんな名著のいくつか(三谷選)は、その本質を、『戦略読書』の楽章2で紹介します。